「他罰的症状を伴う強迫性神経症」は強迫性障害?精神障害の長女を父親が殺害した事件

2015年2月14日に、父親が精神障害のあった長女を殺害した事件がありました。加害者である父親が11月28日に講演会をし、Yahoo!ニュースに記事が出たことで、再び話題になっていました。

精神障害の長女を殺害した父親に長男「よく我慢してきた」

今年2月14日、和歌山市内の自宅で精神障害のあった長女(41)を殺害し、7月に懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を受けた□□さん(81)。

長女は20歳ころから引きこもるようになり、家庭内暴力を繰り返すように。そして2001年、長女は自己中心的で暴言や暴力行為など他罰的症状を伴う「強迫性神経症」と診断された。

社会と考えたい…父が講演 精神障害で暴力20年

□□さんの相談を受けた警察が暴れる長女を保護し、保健所の職員が精神科に連れて行くことも度々あった。自己中心的、他罰的になり、暴言や暴力行為などの症状が見られるパーソナリティー障害などと診断され、入退院は11回を数えた。

強迫性障害である私は、1つ目の記事の「強迫性神経症」という言葉にドキッとしました。しかし、2つ目の記事では「パーソナリティー障害」と書かれています。被害者の病気はどちらだったのでしょう。

強迫性障害は、昔は強迫神経症と呼ばれていました。なので「強迫性神経症」も強迫性障害のことかと思ったのですが。

強迫性障害のことを「強迫神経症」ではなく「強迫性神経症」と表すことは少ないし、法廷やニュース記事であれば、きちんと現代風に「強迫性障害」とするはずです。

「他罰的症状を伴う強迫性神経症」という表現も、他罰的症状が強迫性神経症の症状の説明なのか、強迫性神経症に加えてという意味なのかがわかりません。

他罰的とは、外罰的とも言われ、「自分の欲求不満の原因を外部に求め、他人を非難したり、外部の物・状況に対して攻撃反応を示したりする傾向(goo辞書より)」です。

他罰的症状はパーソナリティ障害に見られ、強迫性障害ではあまり言われません。でも、多くの記事で「強迫性神経症」と報道されているんですよね。

 

強迫性障害の中には暴言を吐く強迫もありますが、強迫性障害=暴言を吐く病気ではありません。

強迫性障害は不潔恐怖や確認などさまざまに症状が分かれていて、その一種類として暴言を吐くケースがあるのです。ただこの場合も、暴言が頭に思い浮かぶだけだったり、独り言のように口に出してしまうだけで、実際に他人を攻撃することは少ないと言われています。

強迫性障害の巻き込みがひどくなった結果、思い通りにならない家族に暴力をふるうというケースはあるかもしれません。

強迫性障害に苦しんでいる者としては、強迫性障害=自己中心的で暴力的になる病気だと誤解されないか心配です。

強迫性障害とパーソナリティ障害は、けっこう違う病気のはず。事件の報道では、正確な病名を使うようにして欲しいです。

 

そして、いくら同情の余地があるという判決だったとはいえ、娘を殺害して1年も経たないうちに講演を行う父親というのは、どういう神経なのでしょうね。私には理解できません。

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