2019年5月8日(水)放送のNHK『あさイチ』の特集「それ、本当に『うつ病』ですか?」を観ました。
春からの新生活や改元・ゴールデンウィークといった非日常の雰囲気の中で、心の不調を感じている人も多いのではないでしょうか。
『あさイチ』によれば、日本人の15人に1人が「うつ病」にかかると言われており、その3割が1年以上治らないそうです。
今日の特集は、うつ病が治らない患者の中に「うつ病」以外の病気や障害が見つかるケースが増えているというお話でした。
公式サイトはこちら。
それ、本当に「うつ病」ですか?|NHKあさイチ
専門家ゲスト:渡邊衡一郎さん(杏林大学付属病院 教授 精神科医)、小林エリコさん(うつ病経験者、作家・まんが家)
ゲスト:三田寛子さん、的場浩司さん
リポーター:馬場典子アナウンサー
入院検査で患者の6割に「うつ病」以外の疾患が見つかった
うつ病は、以下9つの「うつ状態」のうち「気分が落ち込む」「興味・喜びがなくなった」のどちらかを含む5つの症状が、1日中・2週間以上続くと「うつ病」になります。
- 気分が落ち込む
- 興味・喜びがなくなった
- 集中できない
- 気持ちが焦る
- 自分を責める
- つかれている
- 不眠/眠りすぎる
- 死について考える
- 食欲がない/増加
うつ病と診断されると薬物療法が開始されますが、治らない患者もいます。
杏林大学付属病院では「うつ病」がなかなか治らない患者を対象に入院検査プログラムを行っており、そのうち6割に「うつ病」以外の疾患が見つかったのです。
「うつ病」と診断され1年以上投薬治療を続けているのに、なかなか治らない・・・東京・三鷹の杏林大学付属病院では、そうした患者を対象に、国内では珍しい入院検査プログラムを行っています。作業療法士による検査や、臨床心理士による心理テスト、睡眠時の脳波測定などを1週間かけて実施。その結果、なんと患者の6割に、「双極性障害」や「甲状腺機能障害」、さらには「睡眠時無呼吸症候群」など「うつ病」以外の疾患が見つかるといいます。
一般的な精神科でも、1週間は無理としても、ほかの病気の可能性を排除するための診察はして欲しいですよね。
「うつ状態」が起こる「うつ病」以外の疾患
「うつ病」以外の疾患として、以下の病気があげられていました。
- がん
- 脳梗塞
- 甲状腺機能障害
- パーキンソン病
- 薬の副作用
- 認知症
- 睡眠時無呼吸症候群
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 双極性障害
- ADHD(注意欠陥多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム障害)
- パーソナリティ障害
番組では、睡眠時無呼吸症候群と双極性障害の患者さんが紹介されました。
ある男性はうつ病として治療していましたが改善されず、大学病院で睡眠状態を調べたところ、睡眠時無呼吸症候群を併発していることが判明。
なんと、うつ病患者の4割が睡眠時無呼吸を併発しているそうです。
睡眠の質を高める治療をしたことで、うつ状態の症状が軽くなりました。
また、ある女性はうつ状態があらわれて精神科に行ったら10分程度の問診でうつ病と診断され、抗うつ薬を処方されました。
しかし、薬を飲み始めると症状が悪化して会社を退職。
ほかに3軒の病院を回って「うつ病」と診断されたものの、ずっと調子が悪い感じではなく波があり、自分がうつ病なのか疑問だったと言います。
知人の紹介で大学病院を受診。3時間の問診の結果、双極性障害と診断されました。
双極性障害の薬に変えたところ、改善して再就職できました。
東京都三鷹市・杏林大学附属病院の「うつ病」入院検査プログラム
杏林大学附属病院の「うつ病」入院検査プログラムの模様も紹介されました。
東京・三鷹の杏林大学附属病院では、うつ状態がなかなか治らないと感じている患者を対象に、5泊6日の入院検査プログラムを行っています。血液検査や頭部CT、心理検査や知能検査なども10項目以上の検査が行われます。精神科医だけでなく、臨床心理士や作業療法士も加わり、ひとりの患者をさまざまな角度から評価します。検査終了後は、約30人のスタッフによるカンファレンスが行われ、うつの原因や病名について議論し、より正確な診断に結びつけています。この入院検査は、1週間に1名の患者のみ受け入れています。
- 1年以上投薬治療を続けて治らない人が対象
- 1週間に1名の患者のみ受け入れ
- 費用は保険が使えて7~8万円
これは、うつ病の人の多くが受けてみたい検査でしょう。杏林大学附属病院に通院している人が優先とかあるのでしょうか。
臨床心理士や作業療法士などが以下のような10種類以上の検査を行います。
- 血液検査
- 頭部CT検査
- 行動の評価(軽い運動)
- 心理検査
- 描画検査(バームテスト)
- 知能テスト
検査の結果は30人以上のスタッフで共有され、カンファレンス(会議)で診断について議論されます。
費用7~8万円は高く見えるかもしれませんが、時間と人数をたっぷりかけているのを見ると、むしろ大学病院でないとできないくらい安いはずです。
杏林大学附属病院の公式サイトはこちら。入院プログラムの説明は無し。
精神神経科 | 診療科・部門紹介 | 杏林大学医学部付属病院 KYORIN UNIVERSITY HOSPITAL
精神科で正しい診断を受けるためには
まず総合診療科や内科で体の病気が無いか確認
うつ病の人が最初にかかるのは内科が1番多く、2番が産婦人科、精神科は3番か4番とのこと。
精神科で内科的な診察をしてもらえない以上、うつ病かもしれないと思っても、まずは総合診療科や内科に行くのがよさそうです。
精神科の診察時間が短かったら注意
ゲストの的場浩司さんから「基本的には10分くらいしか診てくれないんですか?」という質問が出ました。
渡邊教授は「私も短いときにはそういう風になることもあるんですけれど、だいたい30分から1時間ぐらいが平均」とおっしゃっていました。
診療時間は初診かどうかでだいぶ変わると思いますが…。初診で10分はあり得ないというか、あってはいけないと思います。
もしも私が精神科にはじめて行って初診が短すぎたら、そこでは治療開始せずに別の病院に行きたいです。
セカンドオピニオンや医師への質問
1年くらいかかってみて良くならなかったら、まずは主治医に「なかなか治らないんだけどなんでだと思いますか?」と訊いてみるのがいいそうです。
すぐに病院を変えるのではなく、セカンドオピニオンがおすすめ。
治療についての相談ができるお医者さんというのは、病院選びのポイントになりそうです。
診察時にあるといい記録
うつの原因を特定するためには、記録をつけて診察時に見せるといいです。
- ライフチャート(人生の節目での状態を図にする)
- 睡眠チャート(睡眠時間、気分、行動の活動記録)
- どんな薬をどんな時に処方されたか
うつ病の人にとってはなかなか難しいですが、情報が多いほうが診察もしやすいですね。
あさイチ5/8「それ、本当に『うつ病』ですか?」の感想
うつ病の診断基準や間違われやすい病気がわかりやすかったです。
うつ病ではないのに、うつ病だと診断されて治療を受けてきた人たちがいるというのは悲しいことです。
強迫性障害も誤診が多いと聞きますが、精神疾患以外の病気には間違われない分、わかりやすいほうではないでしょうか。
的確な治療が受けられるように、早くAIによる初診が実現されるといいですよね。
薬物療法も血液検査や脳の検査などで、薬の効果が早くわかるようになればいいのにと思いました。
あとは、藤川徳美医師や奥平智之医師の本を読んできた私としては、「うつ病」以外の疾患に以下3つの病気も入れて欲しかったです。
- 隠れ貧血・質的栄養失調
- 糖尿病(甘いものや炭水化物による血糖値の乱降下)
- リーキーガット症候群
食べ物による不調は自分でも対処できる部分なので、精神科に行く前に試したいものです。
うつ病かもしれないと感じたら、『薬に頼らずうつを治す方法』『マンガでわかる 食べてうつぬけ 鉄欠乏女子救出ガイド』を読んでみるのがおすすめです。
読んだ感想はこちら。
『薬に頼らずうつを治す方法』の感想。マンガと巻頭カラー入りでわかりやすい