『図解 やさしくわかる認知行動療法』を読みました。
本屋さんで立ち読みをしたことはありましたが、曝露反応妨害法以外の認知行動療法も知りたいと思ったのであらためて読みました。
認知行動療法のさまざまなやり方がまとめられた、とてもわかりやすい本でした。
『図解 やさしくわかる認知行動療法』の内容
認知(考えかたのクセ)を変えると、つらい気持ちがラクになる。日常の落ちこんだ気分にも、うつ病や不安障害にも効く。自分で気軽にとり組めるワークシート付き。
目次
- 第1章 認知行動療法とは―考えかたと治療の流れ
- 第2章 【自分でおこなう認知行動療法1】思考パターンを変えてみよう
- 第3章 【自分でおこなう認知行動療法2】行動を変えてみよう
- 第4章 【自分でおこなう認知行動療法3】考え方のクセを見直そう
- 第5章 症状にあわせておこなう、その他の認知行動療法
- 第6章 疾患別・より効果的なアプローチ法
第1章 認知行動療法とは―考えかたと治療の流れ
認知行動療法がどのような治療法なのかと、おもな技法の種類や治療の流れが書いてあります。
治療者向けの内容も含まれているっぽいので、患者としてはさらさらっと読めばいいと思います。
認知行動療法では、事実をねじ曲げて解釈したり憶測をもとに判断する「非適応的な認知」を、事実にもとづいて判断する「適応的な認知」に変えることを目指します。
適応的な認知と非適応的な認知の見分け方のポイントは、「そう考える客観的な根拠があるか」という点です。(20ページより)
認知とは、ものごとの捉え方のこと。考え方、価値観ですね。
非適応的・適応なんて言われると頭が固まってしまいますが、「『根拠がない考え』を『根拠がある考え』に変える」と置きかえればわかりやすいでしょうか。
自分で悲観的に解釈してしまっていることを、客観的な事実から判断できるようにしましょうということかな。
また、認知行動療法というと自分が変わることに不安を覚える人もいるかと思います。Q&Aで治療への不安や疑問に答えてくれています。
気分がつらいときに、考え方を変えるようにいわれると、自分を否定されたような気持になることも。しかし問題は、あなた自身ではありません。あなたがもっている、自分を過度に傷つけるような、ものの見方です。(50ページ)
や、やさしい…!
私も強迫性障害になったときは、自分の性格や考え方がいけなかったんだと自己嫌悪しました。でも、どうすれば変われるのかわからなかったし、変われる自信もありませんでした。
認知行動療法をやってみてからは、考え方の選択肢が増えて自分が快適なほうを選べるようになるだけだとわかりました。
第2章 【自分でおこなう認知行動療法1】思考パターンを変えてみよう
第2章から第4章までは、自分で実践できる章です。ワークシートが載っていて、コピーして使えるようになっています。
自分の気分や思考の分析や評価をするトレーニングや、代表的な認知のゆがみが紹介されています。
代表的な認知のゆがみ10種類
- 全か無か思考
- 一般化のしすぎ
- 心のフィルター
- マイナス化思考
- 結論の飛躍
- 拡大解釈と過小評価
- 感情的決めつけ
- すべき思考
- レッテル貼り
- 個人化
私は完璧でないと意味がないと感じてしまう「全か無か思考」や、ネガティブなできごとを自分と関連づけて考える「個人化」が思い当たりました。
第3章 【自分でおこなう認知行動療法2】行動を変えてみよう
次は、新たな認知をもとに行動してみます。行動への移しかたも詳しく解説されていて心強いです。
行動してみようと言われてもパッとはできなさそうですが、行動を変えるテクニックが3つ載っていました。
行動を変えるテクニック
- 気分がひどく、アクションを実行できないとき
- 不安や恥ずかしさで行動できないとき
- 行動をつい先延ばししてしまうとき
「行動をつい先延ばししてしまうとき」なんて病気と関係なくよくあるので、しっかり読みました(笑)
第4章 【自分でおこなう認知行動療法3】考え方のクセを見直そう
自動思考の根本にあるスキーマを変えるトレーニングです。スキーマは、より根本的な価値観だそうです。
4章は短めですが、自分の考え方を掘り下げていくので濃いですね。精神状態が良く、時間があるときにやるのが良いと思います。
スキーマの核となりやすい価値基準として6つがあげられていました。
スキーマの核となりやすい価値基準
- 完全主義
- 業績依存
- 愛情依存
- 承認欲求
- 報酬欲求
- コントロール欲求
私は「完全主義」と「コントロール欲求」がありますね。あと、意外と「業績依存」というか、役立たないと意味がないという価値観もあるかもしれません。
第5章 症状にあわせておこなう、その他の認知行動療法
認知行動療法のバリエーションをさらに紹介しています。
- 斬新的筋弛緩法
- 自律訓練法
- 呼吸法
- アクセプタンス&コミットメントセラピー
- エクスポージャー法
- ソーシャル・スキルス・トレーニング
- アサーション・トレーニング
- EMDR
- ストレス免疫訓練
名前を聞いたことはあってもわかっていない技法もあって興味深かったです。認知行動療法は本当に多彩な技法があるのですね。
アクセプタンス&コミットメントセラピーは新時代の認知行動療法とも言われているそうです。
「感情や行動を無理にコントロールせず、受け止める」という、マインドフルネスを取り入れたもので、森田療法にも似ていると思いました。
眼球を動かすEMDRは、PTSD、恐怖症、社交不安障害に活用されているとのこと。強迫性障害にも効果がありそうで期待が持てます。
第6章 疾患別・より効果的なアプローチ法
疾患別の認知行動療法が、見開き2ページずつ載っています。
- うつ病
- 双極性障害
- パニック障害
- 社交不安障害
- 恐怖症
- 強迫性障害
- 全般性不安障害
- PTSD
やり方というよりも、この病気には第5章に載っていたこの技法を使うという説明なので、読んだだけでは実行するのは難しいかな?強迫性障害はもちろん曝露反応妨害法です。
『図解 やさしくわかる認知行動療法』の感想
認知行動療法のことがわかりやすいながらも詳しく解説されていました。この「図解 やさしくわかる~」シリーズはレイアウトがとても読みやすくていいです。
認知行動療法ってどういう治療法なんだろう?という疑問にしっかりと答えてくれますし、ワークシートを使って実践してみることもできます。
ただ、知識をつけるのではなく実践したいという人には、少々お勉強部分が多すぎるかもしれません。
『図解 やさしくわかる強迫性障害』は症例も載っていて頭を使わずに読めるページも多いですが、『図解 やさしくわかる認知行動療法』はそれよりもギチッと詰まっています。
とはいえ、お値段が1,620円と安いですから、認知行動療法を自分でやりたい人でも気軽に手にできるのではないでしょうか。
全部を読まなくても、第2章~4章の60ページだけ読んで実践しつつ、わからない部分を詳しく読む形でもいいと思いました。
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