『認知行動療法のすべてがわかる本』の感想

『認知行動療法のすべてがわかる本』を読みました。

強迫性障害の治療法には曝露反応妨害法がありますが、それは認知行動療法の中のひとつです。この本は、うつ病や不安障害にも使われる認知行動療法全体について書かれていました。

読みながら認知行動療法をやってみよう!という本ではなく、認知行動療法とは何か?という説明書のような本です。

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『認知行動療法のすべてがわかる本』の内容

  • 1 共感的で、効果的な治療法
  • 2 話す、書くなど形式はいろいろ
  • 3 患者さんと治療者の共同作業
  • 4 主なターゲットはうつと不安
  • 5 治療はどこで受けられるのか

認知行動療法を求める人が増えている。難しいと思われがちだが、治療者との共同作業で効果は高い。本書は基本理念から治療の実際までを解説。全貌がつかめる一冊。

認知行動療法は、体系がしっかりしているせいか、患者さんたちに「難しそう」「大変そう」というイメージをもたれがちです。実際は、患者さんの状態や希望にそっておこなう、共感的な治療であり、なおかつ、効果も高い手法です。

まず、認知行動療法へのイメージを見直してください。

共感的で、効果的な治療法

認知行動療法とは?ということで、認知・行動・感情の区別、自動思考、考え方のくせであるスキーマなど、認知行動療法の基本が説明されています。

認知行動療法とは、認知療法と行動療法の組み合わせなんですね。

曝露反応妨害法は苦手な物に触れてみたり、行けなかった場所に行ってみたりと行動を伴うことが多いので、行動療法の面が多いのかもしれません。

話す、書くなど形式はいろいろ

認知行動療法といっても、いろいろな形式があります。

  • 【形式1】 本やパソコンを使う、セルフ・ヘルプ式
  • 【形式2・3】治療者の助言や講義を聞くアシスト形式
  • 【形式4】ほかの患者さんととりくむ集団認知行動療法
  • 【形式5】 治療者と二人でとりくむ個人認知行動療法

本を使うセルフ式や集団、そしてもちろん治療者と二人でとりくむ個人認知行動療法は知っていましたが、治療者の助言を聞くアシスト形式というのは初めて知りました。

主流は個人認知行動療法ですが、セルフ・ヘルプ式で足りないところをアシスト形式でちょっとサポートするそうです。

患者さんと治療者の共同作業

個人認知行動療法の流れが書かれています。患者と治療者が協力して進められていくステップがよくわかります。

  • まず、なにがつらいか話してみる
  • 話したいテーマ(アジェンダ)を決める
  • 患者さんと治療者が協力して進める
  • 認知と感情を分けてとらえる
  • 悪循環を発見し、認知か行動を変える
  • なにかひとつ、テクニックを試す
  • ホームワーク(宿題)にとりくむ
  • 終結後も続けることが再発防止に

こんな治療者と一緒に治していけたらいいなという理想的なやり取りが書かれていました。本だから当たり前ですが(笑)

実際には患者が自分の気持ちをうまく話せなかったり、治療者との相性とか…いろいろあるのでしょう。

患者側もこの流れを知っておけば、「治療の流れからそれてしまった」と反省したり、「これは治療者に報告したほうがいい」などと考えて、スムーズに治療を進められそうです。

主なターゲットはうつと不安

認知行動療法はおもにうつ病と不安障害を対象としており、病態によって技法が変わります。

パニック障害、社会不安障害、強迫性障害などの不安障害に使われるのは曝露反応妨害法、エクスポージャー(曝露)という手法です。

エクスポージャーにもイメージを使う「想像エクスポージャー」と体験をする「現実エクスポージャー」があります。

強迫性障害の情報では不潔恐怖の治療法が例に挙げられることが多く「現実エクスポージャー」の話になりがちです。

なので、頭の中だけでの強迫を治す方法はあまり知られていないかもしれませんが、「想像」でもエクスポージャーはできるんですよね。

私も強迫性障害を治すにあたって、確認強迫では「想像」を使い、不潔恐怖では「現実」を使っています。

強迫性障害は責任感が強い?弱い?

この本では強迫性障害を「強すぎる責任感」と表現していました。

手がきれいでも、十分に施錠確認できていても、責任を感じる。反応できる状況だと考え、「手を洗わなければ」「もう一度確認しなければ」という思いにとらわれる(78ページより)

責任感か…。私は自分が行動した記憶がすっぽり抜けたようになり自信が持てないのが苦しみだったので、責任感と結び付けて考えたことはありませんでした。

たしかに「こうなったらどうしよう」という不安と、それに対応しようとする行動は、責任感の拡大とも言えるのかもしれません。

でも私の場合は、責任を引き受ける勇気が出ないという弱さのほうが問題なのです。

責任感というよりは、ものごとを過剰にコントロールしようとしてしまう思いあがりなのかもしれません。

治療はどこで受けられるのか

認知行動療法を受けたいと思ったら、どこで受けられるのかという話です。

病院にかかっていない私が言うのもなんですが、ここはなんていうか、こうなるといいですねという理想形な気がします。

都心部をのぞいた大部分の地域では、まだまだ認知行動療法を受けられる病院を見つけるのが難しい。私も病院を探したことはありますが、最寄り駅から2~3駅まで範囲を広げて、やっと1~2軒あるという感じでした。

そんな状況で、かかりつけ医から認知行動療法を受けられる病院を紹介してもらうというのも無理があります。

紹介を前提として近所の病院に行くよりも、最初から自分で認知行動療法をしている病院を探して、多少遠くても通うほうがいいと思うのです。

特に強迫性障害では、認知行動療法の中でも曝露反応妨害法ができる病院でないと意味がないので、気をつけたいところです。

それに、医師による認知行動療法は医療保険が適用されますが、稼げないことから保険適用外としている病院が多いのですよ。

この本は2010年出版なので、理想に少しでも近づけていればいいのですが。

『認知行動療法のすべてがわかる本』の感想

このシリーズは『強迫性障害のすべてがわかる本』も読んでいます。

図やイラストがたくさん使われていて、本を読むのが苦手な人でも手に取りやすいです。反面、ページの内容がごちゃごちゃしていて、どこから読めばいいのか順番がわかりづらい面もあります。

認知行動療法はだんだん周知されてきていますが、身近に認知行動療法で治った人がいる!という人はまだ少ないと思うんですよね。

お医者さんから勧められても、何それどんな治療法なの?と不安になる人もいるでしょう。保険外診療となるとそれなりにお金を払うことになるので、ためらいも出るでしょう。

そういう人にとって、どのような治療法なのかがわかりやすく解説されていている本でした。

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