『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』を読んだ感想です。
著者の藤川徳美さんは、広島県で心療内科を開院されている医師。うつ病やパニック障害といった精神障害の患者、特に女性に鉄不足が見られたので、食事指導や鉄分投与で解消したら治ったそうです。
考えてみたら、強迫性障害になったときは炭水化物多めの食事になっていましたし、悪化してからはますますその傾向が強かったので、気になって読んでみました。
うどんと納豆と豆腐ばかり食べていましたね…。
『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』の内容
あなたの不調は、「鉄・タンパク不足」の症状かもしれない――。日本女性の大半は、貯蔵鉄(フェリチン)が空っぽの状態で、諸外国と比べても日本人の鉄不足は深刻だ。
しかし普通の検査では見逃されてしまい、また日本では鉄不足への認識が甘いため、多くの人が自分の鉄欠乏に気付いていない。
著者は近年、うつ病やパニック障害の患者に「高タンパク・低糖質食+鉄剤」療法を取り入れたところ、精神科薬を脱し鉄剤投与のみとなり治療を終了(完治)する患者を続出させている。
地球上で最も多く存在する元素、鉄(Fe)。最初の生物、シアノバクテリアをはじめ植物も動物も、鉄なしではエネルギー代謝を維持できず、神経伝達物質やホルモンの合成も滞る。
多数の症例を交えながら、鉄・タンパク摂取の重要性を伝える。
- 第1章 日本女性の8割は鉄が空っぽだった――うつ・パニック障害は「鉄・タンパク不足」が原因
- 第2章 「鉄・タンパク不足」を伴う不安・うつ・パニック障害治療の実際
- 第3章 鉄――地球・生命にとって特別な元素
- 第4章 エネルギー代謝と鉄――あらゆる病に鉄不足が関わる理由
- 第5章 医師はなぜ栄養について知らないのか――治療の旧パラダイムから新パラダイムへ
- 第6章 【実践編】鉄吸収を良くする「低糖質+高タンパク食」とサプリ
フェリチンとは、鉄を貯蔵できるタンパク質のことで、フェリチン値が表すのは、「体内にどれだけ鉄分がストックされているのか」ということです。じつは、心療内科を受診される患者さんのうち、とくに女性の中に、そのフェリチン値が著しく低い方が多いのです。(3~4ページより)
著者の病院では血液検査をしてフェリチン値を測定しているそうです。
精神科や心療内科では問診という自己申告が中心です。精神疾患と体の関連性がわかってくれば、体も診ることでより適切な治療が受けられるのではないでしょうか。
欧米を中心とした他国では鉄分補給対策をしている
欧米を中心とした50カ国以上の国では、小麦粉にあらかじめ鉄が添加されるなどの鉄補給対策がなされています。
<中略>
また、小麦粉に限らず、メキシコではトウモロコシ粉、モロッコでは塩、フィリピンでは米、中国ではしょう油、東南アジア諸国ではナンプラーに、鉄が入っています。
一方、日本ではこうした対策はとられていません。日本人の鉄摂取量は、約50年前の1950年から約6分の1に減少しているにもかかわらず、何の対策もしていないのが現状です。
(37~38ページより)
多くの国で鉄分補給対策がとられているとは知りませんでした。
ただ、日本が対策をしていなくても、他国よりもうつ病やパニック障害が多いという話は聞いたことがないので、ここでは鉄分との関連性は疑問でした。
まあ、主食の小麦粉やトウモロコシ粉ならともかく、調味料に入っていてもたいした摂取量にならない気はしますが。
「鉄・タンパク不足」の解消で効果が出た病気
症例として出てくる「鉄・タンパク不足」の解消で効果が出た病気は、以下のとおりです。
- うつ病
- 産後うつ
- パニック障害
- 不安障害
- 強迫性障害
- 摂食障害
- 発達障害(多動などの軽減)
- パーソナリティ障害
- ひきこもり、不登校
- 統合失調症
女性が中心なので産後うつ、パニック障害の症例が多いです。
強迫性障害の症例で掲載されているのは1人だけでしたが、食事指導と抗うつ薬・鉄剤の服用をしたところ、抗うつ薬を終了できたそうです。
ところどころで完治したと書かれているのは驚きでした。精神疾患や精神障害は完治ではなく寛解と言うことが多いです。
完治という強すぎる言葉を使われていることで、ゆさぶりをかけられているようで少し引きました。完治は憧れで魅力的ですけどね…。
鉄不足の症状
- イライラしやすい。集中力低下。神経過敏。些細なことが気になる。
- 立ちくらみ、めまい、耳鳴り。片頭痛。
- 節々の痛み(関節、筋肉)。腰痛。
- 喉の違和感(喉が詰まる)。
- 冷え性。
- 朝なかなか起きられない。疲れ。
- 出血(アザ)。コラーゲン劣化(肌、髪、爪、シミ)。ニキビ、肌荒れ。
- 不妊。
- レストレッグス症候群(RLS=ムズムズ脚症候群)。
やたらと氷を食べる。…など。(96~97ページより)
強迫性障害がひどいときは神経過敏、些細なことが気になる、立ちくらみ、めまいが当てはまりました。
もともと健康診断ではいつも「貧血気味だね」と言われるので気にしていませんでしたが、つまり鉄不足ということなのですね。
レバーが目に付くと食べようかなと考えるくらいで、積極的に治そうとは思っていませんでした。
6章では鉄不足だと甘いものが欲しくなるとも書かれており、過食症の人が甘いものを大量に食べてしまうメカニズムも説明されています。
「鉄・タンパク不足」を解消するための食べ物
基本は高タンパク・低糖質食です。
- 卵
- 肉
- 魚
- チーズ
子供のための食事療法から一部を抜粋しますが、大人にも参考になると思います。
間食(おやつ)
ゆで卵、チーズ、ナッツ、ハム、ソーセージ、小魚。
油
バター、ラード、ココナッツオイル推奨。ベニバナ油、コーン油、大豆油、ごま油などの植物油は減らす。
塩
天然塩。沖縄の「ぬちまーす」がおすすめ。
(79~80ページより抜粋)
私は卵や肉や魚が嫌いではないですし、炭水化物をたくさん食べるほうでもないですが、野菜が大好きです。なので、たんぱく質が足りていない自覚はあります…。
おやつにアーモンド小魚かナッツ、塩もちょうど買うところだったので天然塩を買ってみます。
鉄の摂取のポイント
- 食品に含まれる鉄は動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」と野菜や穀類などに含まれる「非ヘム鉄」
- 動物性のヘム鉄のほうが吸収率がいい
- 非ヘム鉄はコーヒーやお茶に含まれるタンニンなどで吸収が悪くなる
- 非ヘム鉄はビタミンCで吸収率が上がる
- ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸は貧血改善に必要不可欠
(193~195ページより抜粋)
子供のころから、鉄分というとほうれん草とレバー!と聞いていましたが、動物性と植物性で吸収率の違いがあるとは知りませんでした。
どちらかと言うとほうれん草のほうが手軽に食べられるので、ほうれん草を食べておけばいいだろうと思っていましたが、動物性のほうがたくさん摂れるそうです。
レバーも好きなので良かったです。というか、もしかして鉄分が足りていないから体が求めていてレバーが好きなのかも?
『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』にはエビデンスはない
本書に書いてあることは患者さんが治ったという事実だけで、エビデンス(科学的根拠)は取れていないそうです。しかし、エビデンスは必要ないという考えを示されています。
私は本やネットから情報を取り入れるときは、エビデンスがあるかどうかを重視します。
が、この本に書かれている内容はざっくり言うと「不足している栄養を摂る」というものなので、エビデンスは不要だと思いました。
サプリで鉄分を補給するときは、血液検査を受けるか自分で判断して過剰摂取に気をつけなければなりませんが。
食生活の見直しだけでも改善されると思うので、毒がないと思われる範囲で取り入れたいです。
『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』で紹介されていた鉄サプリ
本書では患者さんに海外のサプリを推奨しているとのこと。日本のサプリとは鉄の種類が異なり、服用量も多いそうです。
ただ、厚生労働省では1日の鉄分の推奨摂取量を、成人女性10.5mg、成人男性7~7.5mg、耐容上限量を成人女性40mg、成人男性50~55mgとしています。
紹介されているサプリは36mgと27mgですので、食事でも鉄分を摂取していることを考えると、けっこう多いです。
『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』の感想
文章は読みやすいのですが、血液の成分や栄養素、患者さんの鉄不足を示す数値や投与した薬の数値などがでてくるので、やや集中力を必要としました。
鉄不足と精神疾患との関連の根拠を証明する部分が多いです。
もちろんそれは大事なのですが、「じゃあどうすればいのか?」が本の中で点々と出てきて、第六章でやっとまとめられていたのでやきもきしました。
内容はとても良かったです。
糖質制限の話かな?と思っていましたが、糖質を制限するのではなく栄養不足を補うというお話でした。
私は糖質少なめの生活を心がけてはいますが、炭水化物を減らした分は野菜やお豆腐で補っていたので、たんぱく質不足を反省するとともにためになりました。
特に、鉄不足の危険性や精神疾患との関連は意識しておきたいです。
海外サプリで鉄分を補給するのはハードルが高いので、食生活を見直します。まずは卵とチーズを常備したいですね。
精神的に調子が悪い女性には読んで欲しい本です。