『敏感すぎるあなたへ 緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』を読みました。
著者はドイツでカウンセリングルームをしているクラウス・ベルンハルトさん。
「敏感すぎるあなたへ」というとHSPの本のようですが、パニック障害をはじめとした不安に悩む人に向けた本です。
帯に「最新の脳科学に基づく画期的な方法を伝授」と書いてあって惹かれました。新しいと言われると知りたくなっちゃうんですよ。
半信半疑で読んでみましたが、なるほど、認知行動療法ともマインドフルネスとも違う、イメージトレーニングを使った治療法でした。
『敏感すぎるあなたへ 緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』の内容
緊張や不安で日常生活に支障が出ている人向けの、自分でできる行動療法。
食生活、運動、思考法などを変えるだけで、心がすっとラクになる。ドイツで大ベストセラー!
脳に「良い手本」を見せて、すばやく、持続的に不安を断ち切る。もう不安にはならない!
目次
- 不安やパニック――その真の原因は?
- 心の声を聞く
- 不安を引き起こす外的要因とは
- ポジティブな脳の回路を作る
- 困ったときの即効テクニック
- 不安にさよならする日
紹介文に「食生活、運動」とありますが、食生活については数ページ、運動は「運動をしましょう」程度なので、この部分には期待しないほうがいいです。思考法がメインです。
1~3章は不安やパニック発作の原因やメカニズムについて、4~5章は思考法の具体的なやり方が解説されています。
「テンセンテンス法」で脳をネガティブからポジティブに再編成する
画期的な治療法として紹介されているのは「テンセンテンス法」といって、10個(テン)の文章(センテンス)を作る方法です。
「あなたにとって本当に素晴らしい人生とはどういうものですか?」という質問に対する答えを文章にして、毎晩頭に思い浮かべます。
要するに、成功体験のイメージトレーニングですね。
最初にこの方法を読んだときは、がっかりしました。なーんだ、自己啓発にありがちな引き寄せの法則じゃないかと感じたのです。
しかし、以下の説明を読んで、やってみようかなと思いました。
最新の脳研究によって、わたしたちが何かを体験すると、脳が非常に多くのシナプスを作ることがわかっています。けれども、何かを集中的にイメージするだけで、ほとんどそれと同じくらい多くのニューロンが連結する事実は、はるかに興味深いものです。
<中略>
この方法はプロスポーツの世界ではすでに何年も前から成功をおさめており、メンタルトレーニングの基本です。(111ページより)
私も曝露反応妨害法をやっているときに、強迫行為をせずにごく普通に行動する自分を思い浮かべていました。
ポジティブにまでは考えられず…というか、ポジティブにイメージしようとまでは思いつかなかったですね。
なるべく平常心で、なんでもないことのように手洗いを終わらせて、手洗い器から離れて部屋に戻ることをイメージしていました。
たしかに、頭の中で練習をしておくと「やり方はわかっている」という心強さになっていたものです。あれをもっとポジティブなイメージでやるなら効果がありそうです。
10個の文章には、以下の5つのルールがあります。
- 否定を含まない
- すべてをポジティブに
- 現在系で
- 具体的に
- 自力で到達できることを
文章の作り方や、脳に効果的にイメージするやり方は丁寧に説明されていて、本を読めば実践できるようになっています。
五感を使う5つのチャンネルテクニック
10個の文章を作ったら、1個ずつイメージしていきます。
毎日20分、10のセンテンスのうちひとつを頭に思い浮かべます。その際、代わる代わる5つの感覚を集中させます。
見る、聞く、感じる、匂いを嗅ぐ、味わう、これらを交互に行います。できるだけ混ぜずに、別々に。(118ページより)
マインドフルネスでは「今」そこにある現実を五感を使って味わいます。テンセンテンス法では、頭の中でポジティブな未来をイメージします。
注視している時間軸は違いますが、マインドフルネスで感覚を鍛えていると、よりイメージしやすいのではないでしょうか。
五感をフル回転させるのではなく、感覚をひとつずつ使うというのが意外でした。分けることで、脳の異なる領域を活性化するのだそうです。
身体感覚による不安のストップテクニック
そのほかに、不安を止める「困ったときの即効テクニック」も載っていました。脳の仕組みに沿って聴覚や視覚に働きかけるもので、おもしろかったです。
中でも、めまい、のぼせる、喉が詰まる、胸が苦しい、胃の圧迫感などの身体感覚を止めるテクニックは興味深かったです。
私は高所恐怖症でもあるのですが、自分の部屋(2階以上)にいても寝る前などに、背中がスッとブラックホールのようになって落ちる感覚に襲われます。
眠りに落ちる感覚が、物理的に落ちる感覚を想像させるのでしょう。多いときでは週に2回くらい発生します。
慣れっこではありますが、心臓はバクバクしますし嫌な気持ちを引きずって、しばらく寝つけなくなります。
まさかそれに使える対処法があるとは思ってもみませんでした。
足元が崩れそうな気がする
地面のいたるところに水圧リフトが埋め込まれていて、足が地面に触るとすぐ、押し上げてくれるとイメージする。(180~181ページ)
もうね、これを読んだときに心でキャーッ!と感嘆の悲鳴をあげましたよ。そんな発想、まるで思いつかなかったですから。
試しに、寝る前にベッドの中で落ちることを想像し、続けて、落ちそうになった瞬間に下から巨大なクッションで押し上げられることをイメージしてみました。
落ちる感覚から解放されたのかどうか、今後が楽しみです。
【追記】
イメージをした結果、落ちる感覚に襲われることがほとんど無くなりました。やってから2か月くらいまったく無く、2か月過ぎたところで1回ありましたが、再びイメージしたらまた無くなりました。
『敏感すぎるあなたへ 緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』の感想
文字がそれほど小さくなく、わりとスムーズに読めました。ただ、テンセンテンス法、5つのチャンネルテクニックなど英語をカタカナにしただけの言葉が多いので、日本語に訳して欲しかったです。
本書は、暴露療法や精神分析といった従来の治療法は脳をネガティブにしてしまう。脳をポジティブにすることで、不安でできなくなっていることをできるようにしていくというものです。
著者が提唱するテンセンテンス法は一見、自己啓発のような方法です。
しかし、今では脳科学にもとづいているとのことですので、試してみる価値はありますね。
暴露療法や曝露反応妨害法は効果的な治療法とされていますが、取りかかることができない人も多いのが難点です。
私も始めるまで時間がかかったので、あの頃にこの本に出会えていたらよかったです。
暴露療法の「不安を味わう」ことを否定してはいますが、併用もできると思うんですよね。
曝露反応妨害法がうまくいくイメージトレーニングとしても使えますし、強迫性障害に振り回されずに楽しんでいる自分をイメージするのもいい。過程が違っても、目指している「治った幸せな未来」は同じなのですから。
苦痛がないので、積極的にやってみたくなる治療法だと思いました。
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