強迫性障害の認知行動療法である曝露反応妨害法は、効果が高い治療法と言われています。効果はどのくらいなのか、効果が出ないのはどういう場合なのかを調べてみました。
曝露反応妨害法による改善の確率
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一方、認知行動療法については前述したように、その導入やアドヒアランスには、患者さんの状態や動機付けの程度などが大きく関わってきます。
もしプログラムの継続・完了が達成されれば、60-90%に何らかの改善をもたらし、そのうち75%では、その有効性が長期的に維持され、さらに薬物療法のみの場合に比べ、高い再発防止効果が期待できます。
すなわち、いずれ薬物を減量していく場合でも、認知行動療法を予め学習し、曝露(不安の対象や状況への直面)、そして反応妨害(強迫行為の制御)を維持できれば、不安の増大や症状の再燃は、かなり予防できるものと考えられます。
すべての人に効果があるわけではありませんが、やり終えたら「60-90%に何らかの改善」というのは、けっこう高確率で効果が出ると言えますよね。
薬物療法だけの治療とくらべて再発が少ない、薬を飲んでも強迫行為をやめる努力は必要だという点で、私は最初から暴露反応妨害法を選びました。
曝露反応妨害法ができない理由の仮説
曝露反応妨害法ができない理由については、以下の仮説がありました。
OCD の行動療法と発症,維持,悪化,治療に関する仮説(PDF)
本稿ではOCDを,曝露反応妨害法(ERP)の有効性という観点から、1.ERPが有効であるOCDと、2.ERPが有効でないOCDに分類した.
さらに、1.をA)容易にERPが行える群と、B)何とかすればERPが可能になる群に分類した.
そのB)のERPを行いにくくしている要因として,1)高くない知的機能,2)他の精神疾患の合併,3)不合理性の自覚が不十分,4)著しい生活の障害,5)不十分な動機づけ,6)他に抱えている問題,をあげた。
そして,それらの要因に対してERPが可能になるための治療の工夫について述べた.
飯倉康郎(2011).精神経誌113巻1号
「何とかすれば曝露反応妨害法が可能になる群」で、さらに行いにくくしている要因が以下のようにあげられています。
- 高くない知的機能
- 他の精神疾患の合併
- 不合理性の自覚が不十分
- 著しい生活の障害
- 不十分な動機づけ
- 他に抱えている問題
元のPDFには曝露反応妨害法をするための対応も書かれています。
曝露反応妨害法をやりたいという気持ちがあっても、強迫観念が強すぎてできない・怖くてできないという人も多いです。できない理由はどれなのか考えてみると、打開策が見つかるかもしれません。
私の場合は、できなかった時期には「不合理性の自覚が不十分」と「不十分な動機づけ」がありました。うつ状態が続いていたら、うつ病による「他の精神疾患の合併」も出たかもしれません。
曝露反応妨害法の効果が出ない理由の仮説
OCD の行動療法と発症,維持,悪化,治療に関する仮説(PDF)
2.曝露反応妨害法(ERP)が有効でないOCD
これは,「強迫行為による不安軽減の❝悪循環❞」を呈していないタイプのOCDであり,代表例として強迫性緩慢が挙げられる.
曝露反応妨害法(ERP)が有効でないタイプとしては、代表として強迫性緩慢があげられています。また、別の精神疾患の可能性もあるそうです。
これを読むと、曝露反応妨害法の効果が出ない強迫性障害は少ないようです。
難しいのは、本人が曝露反応妨害法をやる気になる、治療の意味を理解する、強迫行為をやめる決意をできるかどうかなのでしょう。