強迫性障害の曝露反応妨害法はつらいだけの治療法ではない

強迫性障害の認知行動療法である曝露反応妨害法は、我慢だけのつらい治療法だという意見を見ました。

恐れている強迫観念に抵抗して強迫行為をやめるのですから、無理もありません。

私も「曝露反応妨害法なんてできっこない」「強迫行為を我慢できるくらいならその時点でもう治っている」と考えていました。

でも、できるようになったり、できてもすぐに治ったわけではありませんでした。経験してみるまではわからないものです。

もしも「つらいだけ」だったら、曝露反応妨害法をやる人なんていませんよね。

曝露反応妨害法をやった経験から、どのくらいつらかったか?というのを書いてみます。

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曝露反応妨害法は治る喜びと達成感がある

曝露反応妨害法の最大のメリットは、強迫性障害が治ることです。当たり前だと思われるでしょうが、やはりこれが最大です。

私は強迫性障害が治ることと強迫行為をやめる苦痛をくらべて、治るほうを選びました。

もう一つ、治療中の達成感も大きいです。

強迫行為をしているときって、すごくみじめな気持ちだったんですよ。

やりたくもないことをやらずにいられない。我慢できない。また時間を無駄にしてしまった。私はなんて弱い人間なんだろう。なぜやめることができないんだろう。

いつも自己嫌悪でいっぱいでした。

曝露反応妨害法をしたことで、小さな課題から成功体験を積み重ねていき、やればできるという自信をつけることができました。できずに落ち込むことも多かったですが、できたことに注目して、またがんばろうと思えました。

大変なだけ、できた!という喜びも大きかったです。

曝露反応妨害法は患者の意志が尊重される

曝露反応妨害法は、怖いことを無理やりやらされる治療法だと誤解している人もいます。

病院などで曝露反応妨害法をする場合でも、治療者が患者の同意なしに課題を強制するということはありません。患者の意志が尊重されます。

難易度が高い課題を提案されることもあるでしょう。でもそれは、ただの(なんて言っちゃいけないかな?)提案です。

提案を受けてやるかどうかは、患者の意志なのです。

私は曝露反応妨害法のやり方をちゃんと知っていなかったときは、恐怖度が高い課題だけを見て「無理無理!」と拒絶していました。

最終的にあそこまでやる心の準備ができていないうちは、できないと思っていました。

『図解 やさしくわかる強迫性障害』を読んで、できるようになりたいことに少しずつ取り組むのでもいいと知りました。

曝露反応妨害法は筋トレのようなもの

曝露反応妨害法はひたすら我慢する治療法なのでしょうか?

たしかに最初のうちは我慢だ!と勢いをつけて、「がんばってる私えらい」という悲劇のヒロインごっこでやる気に変えていました。

でも慣れてくると、我慢とか耐えるというよりは、筋トレのように負荷をかけているだけだと考えられるようになりました。

また、筋トレは筋肉をつけるために自分からすすんでやるものですよね。曝露反応妨害法も同じように、治すためにはやりたい気持ちが出てきます。

怖くてぞわぞわーっとしても「おお、きたきたー!」と、不安ウェルカム!これが効くんだよね!!みたいな謎のテンションになります(笑)

今でも不安や不快感は感じますが、我慢している・つらいという気持ちはほとんどありません。自分が強迫性障害を治したくてやっていること、望んで選んでいる行動だと理解しているからです。

強迫性障害のままでいるよりはつらくない

曝露反応妨害法はつらすぎてできないと言う人もいますが、私は強迫性障害でいることのほうがつらかったです。

強迫性障害のままで残りの人生を生きていくことを考えるとぞっとしましたし、そんな未来は嫌でした。

強迫性障害が治る可能性があるのに治さずにいるのは、強迫性障害のままでいることを選んでいるのだと思いました。

そのころは一日中ずっと強迫性障害で苦しんでいるような状態で、毎日へとへとに疲れ果てていました。

強迫性障害でいるほうが楽だとは思えず、覚悟を決めて曝露をしたほうがまだよかったのです。

強迫行為で疲れるのはまったくの無駄だし、そのエネルギーを治す方向に使ったほうがいい。不安も恐怖も、曝露でまとめて先払いしたほうが少なく済むんじゃない?

実際にそうしてよかったし、想像していたよりも安く済んだな~と思っています。

曝露反応妨害法をしても死ぬわけじゃない

曝露反応妨害法の苦痛はどれくらいなのか?というお話ですが。こればかりは、個人差があるので何とも言えません。

強迫性障害は苦痛を実際よりも大きく考えてしまう傾向があります。

そこから考えると、想像しているよりもつらくない可能性が高いのではないでしょうか。

曝露反応妨害法をやった人たちの体験談でも、「思っていたよりつらくなかった」「こんなものかと思った」という感想もあります。

『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則』の著者の田村さんは、強迫行為をやめるときに発作を起こしたと書かれていましたが、自己流でやめたときのお話なんですよね。曝露反応妨害法で段階的にやったら、そこまでではなかったのではないでしょうか。

私の場合は、胸がドキドキしたり鳥肌がたちました。ボロボロ泣きましたし、いろんな感情が押しよせてきて、考えすぎて頭痛もしました。

でも、それだけです。頭の中が大騒ぎだっただけで、命に別状はありませんでした(笑)

これで治るのだったら早くやればよかったと後悔しました。

やる前の葛藤を忘れたわけではありませんが、強迫性障害に費やしてしまった時間を惜しむ気持ちのほうが大きかったです。
強迫性障害の曝露反応妨害法を早くやらなかった後悔

曝露反応妨害法をしたらどうなるかを具体的に想像する

曝露反応妨害をやるかどうか迷っていたときに考えたことは、『不安もパニックも、さようなら』という本の「そうしたらどうなるか」技法と同じでした。

文字どおり、「そうしたらどうなるか」を具体的に考える方法です。


私が考えた「曝露反応妨害法をしたらどうなる?」の問題点は以下の3つ。

  1. 失敗したら悪化してしまうかもしれない
  2. パニックになってしまうかもしれない
  3. 家中に汚れが広がってしまうかもしれない

あくまでも「かもしれない」という想像でしかありません。それに対して出した答えはこちら。

失敗したら悪化してしまう

→ 一日中強迫性障害にとらわれていて、もう耐えられないくらい十分に悪いのに、これ以上の悪化ってどんな状態!?(なぜか逆ギレ気味)

手洗いの時間が増えようが風呂の時間が増えようが、苦しんでいる時間はこれ以上増えないのだから悪化してもいい。今よりひどい地獄はない!

家族や恋人には迷惑をかけてしまうかもしれないけれど、このままでいるほうが将来的に迷惑をかけ続けることになる。失敗して多大な迷惑をかけたら本当にごめんなさい。

パニックになってしまう

→ パニックってどういう状態?泣きわめく?錯乱する?意識を失う?それだけでしょ?死ぬわけじゃないからいい。

家中に汚れが広がってしまう

→ 中古の賃貸なので前にも住人がいたし、強迫性障害になる前の自分がすでに汚していた。

今より汚れて耐えられなくなっても、何日かけてでも端から掃除していけばいい。大掃除の5倍?10倍?

ずっと強迫行為をし続けることとくらべれば、たいしたことない。

不安が実現したらどうなるかを具体的に考えることで、失敗してもいいと思えました。

この頃はとてもつらくて、いま以上の地獄なんてないしあっても別にいいくらいに開きなおった気持ちだったんですよ。

強迫性障害でいることは、本当につらかったです…。

私は『図解 やさしくわかる強迫性障害』を読んで曝露反応妨害法をやったことで、強迫性障害が治りました。

曝露反応妨害法はつらい怖いという印象だけが広がるのはもったいないので、書いてみました。

私が治すのに使った本。新版『図解 やさしくわかる強迫症』が出ています。

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