『新装版 不安でたまらない人たちへ やっかいで病的な癖を治す』の感想。脳の暴走をとめて強迫行為をやめる

『新装版 不安でたまらない人たちへ やっかいで病的な癖を治す』を読みました。

1998年に発行された『不安でたまらない人たちへ』の新装版です。タイトルからは強迫性障害の本とわかりにくいですが、強迫性障害と治療法について書かれた本です。

広告

『新装版 不安でたまらない人たちへ やっかいで病的な癖を治す』の内容

  • 序章 強迫性障害とは何か
  • 第1章 第一段階 ラベルを貼り替える
  • 第2章 第二段階 原因を見直す
  • 第3章 第三段階 関心の焦点を移す
  • 第4章 第四段階 価値を見直す
  • 第5章 自分の心を自覚する
  • 第6章 家族はどうすべきか
  • 第7章 過食、アルコール依存症などへの応用
  • 第8章 治療にあたって
  • 第9章 「浮き輪」としての薬
  • 第10章 あなたは強迫性障害ですか?

認知行動療法を元にした「四段階方式」が本書の治療法です。

強迫性障害の認知行動療法では曝露反応妨害法として、苦手なものに対峙して強迫行為を減らしますが、本書では曝露まではせずに強迫行為をやめる方法が書かれています。

強迫性障害の治療法「四段階方式」

『不安でたまらない人たちへ』では、強迫性障害の治療法は「四段階方式」になります。

  1. 第一段階 ラベルを貼り替える
  2. 第二段階 原因を見直す
  3. 第三段階 関心の焦点を移す
  4. 第四段階 価値を見直す

第一段階 ラベルを貼り替える「わたしではない、OCDがさせるのだ」
ラベルを貼り替えるとは、脳に侵入してくるいやな考えや行動に真実のラベルを貼ること、つまり強迫観念、強迫行為と呼ぶことである。(103ページより)

第二段階 原因を見直す「脳のロックをはずす」
原因を見直すとは、「どうしてこんな観念や衝動がつきまとうのか、どうして、消えないのか」という問いに答えることだ。答えは「それがOCDという医学的疾患だから」である。(140ページより)

第三段階 関心の焦点を移す「願っているだけでは、実現しない」
関心の焦点を移すとは、好ましくない観念や衝動が浮かんだときの行動を変え、有益で建設的な活動に関心を向けることである。何かべつの活動をしよう。(171ページより)

第四段階 価値を見直す「OCDが教えてくれること」
現実をできるだけすばやく、はっきりと把握すること。さらに「ほんとうにそう思っているのではない、OCDがそう感じているだけだ」と自覚して自分に言いきかせ、現実を正しく観察しよう。(195ページより)

四段階方式では強迫観念を起こさせているのが強迫性障害(OCD)だということを頭に叩きこみ、脳が間違った信号を送っていると認識し、強迫行為を行わないようにします。

普段の強迫行為をやめる方法として書かれていて、強迫行為を超える曝露をするようには求められていないのが良かったです。

強迫性障害の曝露反応妨害法は、常識を超えた曝露が求められます。

たとえば私のような不潔恐怖症では、トイレの便器の水に手を浸して手洗いをしないまま汚れを広げたりします。※患者の同意のうえで行い、強制するものではありません。

しかし、私はそこまではできず、日常生活の中であり得る範囲でしか曝露を行っていません。もしかしたら、弱すぎて曝露とは言えないのかもしれません。

そのため、治療に時間がかかっています。良くないのかもしれないと思いつつ、思い切る覚悟ができないまま、ちみちみと強迫行為を減らしています。

四段階方式はそんな私の治しかたを、より良くできる治療法だと思いました。

いままでは強迫行為を我慢するときは、単に「曝露だから」「やめないと治らないから」と考えていましたが、本書で言われているとおり「脳が暴走しているんだ」と考えるほうがやめやすくなりました。

強迫観念&強迫行為だと判断することの難しさ

いまの私は、たいていの強迫観念が幻だということを認識できます。しかし、悪化時には何が本当で何が間違っているのか判断できませんでした。

というか不潔恐怖症の場合は、世の中のものすべてが汚れているというのは、細菌レベルで言うと正しいはずです。

そこから「汚れている」という基準を、「目に見えて汚れている」「生活に支障があるほど汚れている」「ほとんどの人が嫌だと思うほど汚れている」という、常識的な価値観にもっていかなくてはなりません。

ただ、渦中にいるとその判断ができないわけで…。どれが間違った信号なのかわからない段階では、「脳のロックをはずす」のが難しいんですよね。

いまになって振り返ると、「こんなことはやりたくない」と感じた行動はすべて強迫行為だったのではないかと思います。

脳の図が効果的だった

本の裏表紙に掲載されている、強迫性障害の患者の脳が過活動している図は効果的でした。

強迫観念にとらわれているときに、単に「15分だけ我慢してみよう」と考えるのではなく、「脳が暴走しているから落ち着くまで待とう」と考えるほうが冷静になりやすかったです。

いままでは、強迫観念でパニックになっても「とにかく落ち着け」という風に、自分への指示が曖昧でした。

それが、脳の図を見たことで「脳が正常になるように鎮めよう」という具体的な指示に変わり、気持ちが楽になりました。

勉強や仕事でも、何もわからないまま作業をしているのと目標を理解して作業をするのでは効率が違います。それと同じ効果が出たのだと思います。

『新装版 不安でたまらない人たちへ やっかいで病的な癖を治す』を読んだ感想

強迫行為を減らすためのステップをわかりやすく解説してくれていて、とても参考になりました。

「第二段階 原因を見直す」で「それがOCDという医学的疾患だから」という答えには、がくっときましたが…。でも、本当にそうなんですよね。

強迫性障害は原因を追究しても仕方がありません。現状の強迫行為をしている自分に目を向けて、行動を変えなければならないのです。

そう考えると「それがOCD」は「OCDになった事実を受け入れて諦めろ」という答えでもあるととれます。

本の読みやすさとしては、文章は難しくはありませんが、文字が小さくページも多いので読むのに時間がかかりました。

ところどころに症例が挟まれていてそれがわかりやすくもあるのですが、忘れたころに前の人が再登場して、えーと、さっきのあの人か!という面倒くささはありました(笑)

車のバッテリー液が気になる人や、パンツが小さくなるのを心配している?などという変わった症例も出てきます。強迫性障害の強迫観念の広さにうなるばかりです。

脳の誤作動だけあって、想像力の翼が広がりすぎるのでしょうね。眠っている間にみる夢は「なんでこんな夢をみるんだろう?」という奇想天外なものが多いですが、強迫観念もそれに近いものがあります。

アメリカの患者さんたちが強迫性障害と戦う様子は、国が違っても苦しみに同感できると共に、本当にこの病気は脳の誤作動なんだ、人種も何も関係ないんだと実感できました。

強迫観念に振り回されていることはわかっている、強迫行為をやめたいと思っている、だけどやめ方がわからない。そういう人はヒントを得られるのではないでしょうか。

強迫性障害のおすすめ本まとめはこちら。
強迫性障害のおすすめ本と人気10冊を読んだ感想

タイトルとURLをコピーしました