『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則 増補改訂』の感想。患者が書いた貴重な体験談

『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則 増補改訂』を読みました。

2001年に発行された『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則35』の増補改訂版として、2014年に発行されました。少し大きめの文字で192ページと比較的読みやすかったです。

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『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則 増補改訂』の内容

  • 第1章 強迫性障害(OCD)とは、および強迫性障害のメカニズム・フローチャート
  • 第2章 強迫性障害の症例
  • 第3章 強迫性障害克服の鉄則
  • 第4章 強迫性障害克服のためのワークブック

医師にも薬にも頼らず強迫性障害を克服。

著者は、長年強迫性障害に苦しみ、これを克服した実体験から、この障害との付き合い方、克服の仕方を40の鉄則にまとめまた。相談者や著者自身の体験談、そこから導き出された鉄則は、強迫性障害に苦しむ本人だけでなく、その家族にとっても、不可解な強迫性障害の特徴を捉え、障害と闘っていくうえでの勇気を与えてくれます。

本書の出版と同時にウェブ上の相談室も開設。

第1章は強迫性障害のメカニズム、第2章は筆者自身の体験談と筆者が相談を受けた人たちの症例です。

第3章の強迫性障害克服の鉄則がメインとなっていて、40の鉄則に解説がついています。

第4章は強迫性障害克服のためのワークブックとされていますが、不安階層表を含めて6ページと短いです。この本を読んでちょっと試してみよう程度ですね。

以下の出版社サイトで40の鉄則を含めた目次が見られます。
実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則 〈増補改訂〉/星和書店

強迫性障害を自分で克服した人が書いた体験談

筆者の田村浩二さんは強迫性障害(おもに縁起恐怖)をご自分で克服されて、強迫性障害の相談も受けられています。強迫性障害を克服したと公言する人が少ない中で、ご本人が書いた数少ない体験談です。

強迫性障害に限りませんが、病気というのはなってみないと実際の苦しさや辛さがわからないものです。

私は曝露反応妨害法に挑戦してはいますが、治療者の人が書いた本に対しては「強迫観念に晒されていないからそんなことが言えるんだ」「こんなに苦しいのに簡単に言わないで欲しい」という感情もゼロではありません。

こんなことを言っても仕方がないのはわかっていますが、スイスイと治療を進められるわけじゃないんですよね…。

そんな中で、患者として強迫性障害の苦しみを味わった人からの言葉は素直に受け止められますし、実感をともなっていて胸に響くものがありました。

特にいいなと思った鉄則を3つご紹介します。

鉄則6:今、やろうとしていることが強迫行為かどうか迷うようであれば、それは強迫行為である

本当に必要なことならそのような迷いは一瞬たりとも感じないからです。もう何度も確認はした、でもまだ不安なので確認したい衝動に駆られる、これは明らかに確認行為です。(『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則 増補改訂』54ページより)

私は悪化時には、迷うことなく強迫行為が必要だと思ってやっていました(笑)

でも、治ってきてからは「これは強迫行為ではないか」「やる必要のないことではないか」と思うことが増えています。

迷いつつもやったりやらなかったりするのですが、たしかに迷っているときは強迫行為なんでしょうね。迷っているので、その判断ができないのが辛いところなのですが。

「鉄則7:少なくとも、強迫行為をしようかどうか迷った時はしない方がよい」もありますので、この言葉を胸に、迷ったら強迫行為をしないでいきたいです。

鉄則9:大事なことは体感することであって、理屈で納得しようとすることではない

順番としては、納得してから行動に出るのではなく、納得がいかないまま、無条件に強迫行為をしないで行動を起こすことが重要なのです。(『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則 増補改訂』59-60ページより)

これは曝露反応妨害法をするうえでも大切なことです。先に強迫観念を理屈で解消しようとしても難しいのですよ。

強迫観念がおさまってから強迫行為をやめるのではなく、強迫観念があっても先に強迫行為をやめる。強迫行為を減らせば、強迫観念が浮かばなくなってきます。

私もまだまだ、完璧にできるわけではありません。強迫行為をしないために「普通はしないから」「大丈夫だから」などという、自分を安心させる言葉はポツポツと思い浮かんでしまいます。

しかし、頭に何が浮かんでいても、とにかく強迫行為をしないことが重要だと考えています。

鉄則27:被害者意識を捨てるべし

(※汚いものを)仮に見てしまったとしても、そのことを恨むのではなく、スルーできるような自分自身を養ってほしいのです。(『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則 増補改訂』126ページより)

とても「あるある」とうなずける鉄則でした。

私は強迫性障害になってから、いつも運悪く強迫の種に遭遇してしまうと感じていました。

余裕がなく、ちょっとしたことでパニック状態になりました。ちょっとしたことと言っても、渦中にいるときには重大なことに思えてしまいます。

パニックになる原因は「自分の思い通りにならないから」なんですよね。でもその「思い通り」は「強迫性障害の私が考えた理想の世界」であり、現実とはほど遠いものです。

現実は道に犬のフンが落ちていて、誰かが唾を吐いていて、お店でも商品が床に落ちています。それ以上の、普通の人でも嫌だろうというひどい光景もいっぱい目にしました。

嫌なものをどう受け止めるかは自分次第。世の中は強迫になる前と変わらない。自分の受け止め方を変えなくては楽にはなれない。

そう考えて、道に犬のフンや唾のあとがあるのは当たり前、物が床に落ちるのも不可抗力、そう受け止めるようにしています。

体験談なので曝露反応妨害法にそぐわない鉄則もある

元患者さん…いわば素人さんが書いた本ということで、医学的な根拠がないという裏目はあります。

文章にもそういった不明瞭な部分が表れていて、「~だと思います」とあくまでも筆者の考えであるという姿勢がうかがえます。

田村さんは本の執筆時点では認知行動療法のことも詳しくは知らないと書かれています。だからでしょうが、曝露反応妨害法と照らし合わせるとそれはどうかな?と思う部分もありました。

たとえば、相談を受けている人に「大丈夫」と言って安心させたり、「鉄則16:強迫観念を無視しても、恐れているようなことは何も起こらない」「鉄則29:かすかながらでも大丈夫ではないか、何となく大丈夫ではないかと感じたら大丈夫である」など。

こういった「強迫行為をしなくても大丈夫」というのは安心行為であり、不安に慣れるという曝露反応妨害法の目的からはずれてしまいます。

曝露反応妨害法と並行するなら正しいやり方を理解して、自分なりに参考にする鉄則としない鉄則をわけたほうがいいと思いました。

『実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則 増補改訂』の感想

患者の立場から克服法を書いた本というのは貴重です。

私がこのブログを書き始めたころは、ブログでさえ「強迫性障害が治った」という声は少なく、あったとしても具体的にどうやって治ったかという体験談は見当たりませんでした。

辛い日々のことが綴られていて、更新があいていると思ったら「治りました」でその後更新されていない…。ある意味、本人にとっては良かったですねというやつです(笑)

なので、まずは治るまでの体験談を本で読めるのがありがたかったです。

曝露反応妨害法として厳密にはどうかと思える鉄則もありましたが、大きくはずれているということはありません。

ただ、この鉄則とこの鉄則はひとまとめにできるのではないか?というものがあったり、全体的に文章があまり整理されていない印象です。監修や編集がしっかりと入れば、より読みやすかったのではないかと思います。

強迫性障害の本というと分厚い専門書が多い中で、気軽に手に取って読める本です。

曝露反応妨害法をやってみたいけれど決心がつかないという人は、まずはこの本の鉄則を読むと励みになるのではないでしょうか。


本の中で治療に使った本としてあげられていた2冊です。特に『不安でたまらない人たちへ』はおすすめです。


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