2019年4月7日(日)放送のフジテレビ『ザ・ノンフィクション シンデレラになりたくて…2018~前編~』を観ました。
女子マラソンの元日本代表選手でありながら、窃盗により2度逮捕された原裕美子さんのお話です。
タイトルの「万引きランナー」は、本当にそんな呼び方をされているのか疑問でしたが、インパクトは大きいですね。
原裕美子さんの経緯は以下のインタビュー記事がわかりやすいです。
「がんばる。こんなにも応援してくれる人がいるから」~原裕美子さん摂食障害と事件について語る
『ザ・ノンフィクション 万引きランナーと呼ばれて』の内容
2018年12月の判決寄りよりも半年前からの密着取材。
原さんが依存症患者の更生施設で共同生活をしているところから始まりました。
買い物や料理をしたり、職業訓練で自給100円で働いてやりくりをしたり、社会復帰をするためのリハビリです。
同じ依存症患者へのほのかな恋や、家族との軋轢、判決前後の様子なども取り上げられていました。
依存症の治療である条件反射制御法
原さんの治療のひとつとして「条件反射制御法」をしている場面がありました。
条件反射制御法とは、依存による望ましくない行動を再現しながら、その行動によって得られるはずの報酬を与えないことで、「依存行動をしても無駄」という経験を積む治療法です。
強迫性障害にも使われます。
窃盗症である原さんは、お店で商品をバッグに入れようとする動作をしていました。「盗もうとしながら盗めなかった」という体験を繰り返すのです。
更生施設の人がついているとはいえ、実際のお店でやっているので、見ていて気持ちのいいものではありませんでした。
ほかの番組では、窃盗症の人が買い物に行くときは透明のバッグを使っていたので、そうして欲しいなあと思ったり…。
あ、でも、不透明なほうが「盗めてしまう」感覚があって効果的なのかも?
依存症はまっすぐ治る病気ではない
最終的に原さんは経理の仕事が見つかり、更生施設を出て一人暮らしを始めることになりました。
良くなったんだね、よかったよかったというムードで終わるのかと思いきや、残酷なナレーションが重なります。
それは、原さんが厚生施設内でも窃盗をしていたという事実。共同の冷蔵庫から鶏肉を盗み、自分の部屋に持って行ったそうです。
作った料理をほかの人たちに食べてもらえなかった腹いせにやったとのこと。
番組の途中では、もう盗みたいという欲求もないと語られていたので、ショッキングな結末に見えるかもしれません。
しかし、依存症を知る人にとっては意外ではありません。
依存症の治療は再発との戦い。「欲求がない」と言い切るほうが不自然で危ない感じがしました。
欲求があることを本人も周囲も認めること、欲求との付き合い方を覚えて地道な積み重ねをしていくことが治療への道なのではないかと思います。
私も今だに強迫行為をする日もあります。強迫行為をしない日が増えて、だんだん治っていくものだと考えています。
ただ、窃盗症や薬物など犯罪が絡む場合は、本人も二度とやらないと誓うし、周囲も倫理上それが当然として求めるので難しいですね。
心の耐久性をつけることの大切さ
依存症を治すには人との繋がりが大切だと言われています。人と交流し、人間関係の中で認められることで依存が減るのだそうです。
たしかにそうでしょうが、つらいことがあったとき、イライラ・モヤモヤするときに、耐えられる力をつける。心の耐久性も大切です。
さまざまなストレス対処法(コーピング)を持っていれば、依存行為以外で解消できるようになります。
人によってはその対処法が、ほかの人に話すことかもしれません。でも、それだと「ほかの人」がいないときに解消できません。
一人でできる対処法もあるほうが楽になります。
原さんの場合は、まだ「盗む」がストレス対処法のひとつになっているのが残念です。
盗むことでしか得られない感覚があるのでしょう。
それが一時しのぎであること、悪循環をまねいて次の苦しみを連れてくることを、わかって欲しいです。
きっと認知行動療法や心理教育などで理解はされているはず。
知識として「理解」するだけでなく、自分のものとして実感して「わかった」ときに、回復に近づくと思います。