札幌の父親による娘殺害事件の動機は強迫性障害(潔癖症)だった

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2016年3月5日に、札幌で81歳の父親が43歳の長女を殺害した事件がありました。

事件発覚当時は、殺害の動機は「娘の病気により将来を悲観」と報道されていました。しかし、公判が始まり、被害者である娘さんの病気が強迫性障害(潔癖症)だったことがわかりました。

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5日午前4時5分ごろ、札幌市中央区宮の森4の5のマンション駐車場で、止めてあった軽乗用車内から、このマンションに住む無職、○○さん(43)の遺体が見つかった。北海道警札幌西署は同日、同居する父親の無職、□□容疑者(81)を死体遺棄容疑で逮捕した。

<中略>

同署によると、□□容疑者は80代の妻と○○さんとの3人暮らしで「娘は病気だが、自分たちは高齢で、将来、面倒をみていくことができないと思った」と供述しているという。

札幌の長女絞殺 81歳父が起訴内容認める 初公判 | どうしんウェブ/電子版(社会)

冒頭陳述で検察側は、○○さんが極度の潔癖などの症状がある「強迫性障害」を患っていたと指摘。殺害動機について「個別包装の菓子しか食べずにやせ細り、両親の外出を禁じるといった行動を取る娘の姿を見て、殺害を決意した」と述べた。弁護側は「被告は病気の娘を残して死ぬわけにはいかないと考え、殺害に至った。決して娘が邪魔になったり、憎くて殺したわけではない」と述べた。

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論告で検察側は「約30分にわたって首を絞め続けた残酷な犯行。被告は最悪の事態に至る前に、何としても長女に医療を受けさせるべきだった」と指摘した。

弁護側は「長女は治療を受ける意思がなく、根本的な解決法が見つからなかった。果てしない異常な生活の末に起きた事件で、同情できる」と述べ、執行猶予付き判決を求めた。

最終意見陳述で□□被告は「娘を殺すしか方法がなかったのか、今も答えが見つからない」と述べた。

強迫性障害とは、不合理な考え(強迫観念)が浮かんで、それを解消する行動(強迫行為)を繰り返してしまう病気です。

強迫性障害における潔癖症(不潔恐怖症、洗浄強迫)は、排泄物や他人など汚いと思うものを恐れて、過剰な手洗いなどの洗浄行為を繰り返します。

なぜ強迫性障害だと個別包装の菓子しか食べられないのか?

「個別包装の菓子しか食べずにやせ細り、両親の外出を禁じるといった行動を取る娘の姿を見て、殺害を決意した」

この文を見て、涙が出ました。被害者の娘さんが「個別包装の菓子しか食べ」なかった…食べられなかった理由がわかる気がしたからです。

私の場合は排泄物を恐れるあまり、「トイレ後に手洗いをしない人が触った可能性があるもの」を恐れていました。それはつまり、世の中のものほぼ全部です。

包装されている食べ物でも、店に並ぶときに手洗いをしていない人が触ったかもしれない。床に落ちたかもしれない。そう考えると、菓子パンですら外袋の汚れが怖いのです。

「個別包装の菓子」なら、清潔を保った食品工場で、個包装がさらに大袋に入れられているので、比較的綺麗だと思えます。被害者もそう考えていたのかもしれません。

強迫性障害への対応方法を知ってほしい

被害者が両親の外出を禁じたのは、強迫性障害の「巻き込み」という症状です。強迫性障害では、家族をはじめとした周囲の人を自分の行動に巻き込んでしまう場合があります。

巻き込みが酷くなると家庭内暴力が起こることもあります。殴る蹴るといった暴行だけではなく、事件の「両親の外出を禁じる」のように、行動の制限も暴力です。

家族の対応としては、「巻き込み」に応じてはいけません。

しかし、被害者が治療を受けていなかったということは、加害者の親御さんが自分で調べない限りは、それを知る機会もなかったでしょう。

親御さんも高齢ですし、被害者の娘さんも43才となると、まだ強迫性障害の情報が少ないころから発症されていたのかもしれません。

いまはインターネットで検索をすれば、強迫性障害がどんな病気なのかも家族の対応方法も情報があります。

『図解 やさしくわかる強迫性障害』をはじめとした本も出ており、大きい書店や大きい図書館なら置いてあることが多いです。

治療意欲がない強迫性障害患者をどう回復させるか

「長女は治療を受ける意思がなく、根本的な解決法が見つからなかった。果てしない異常な生活の末に起きた事件で、同情できる」

強迫性障害の治療方法は薬物療法と行動療法があります。薬物療法は医師の診断が必要ですし、行動療法は本人の治療意欲が必要です。

治療を受けたくない=治りたくないではない

被害者の長女に「治療を受ける意思がなく」と言っても、治りたいという気持ちはあったかもしれません。

強迫性障害の場合は、患者が「病院に行きたくない」「薬を飲みたくない」と言っても、治りたくないという意味だとは限らないのです。

不潔なものが怖くて強迫行為をやめたいと思えない。外出できないから病院に行きたくない。薬が安全か不安だから飲みたくない。認知行動療法をするのが怖い。そんな強迫観念が邪魔をしている場合もあります。

治療意欲を出させることの難しさ

患者が治療を受ける意思がないと主張している中で、治りたいという気持ちを救い上げて治療に向き合わせるのは、かなり難しいと思います。

病院の中には、治療意欲を起こす・高めるカウンセリングを行ってくれるところもあります。

でも、そもそもカウンセリングを受けさせるまでが困難なのですよね。そのような場合には、家族が先にカウンセリングを受けて患者への対応を学び、治療意欲をわかせるという方法があります。

ここで問題になるのは、強迫性障害のカウンセリングは保険診療でしてくれる病院が少なく、ほとんどは自費診療だということ。お金がないと、結局は家族が自力で学ばなくてはなりません。

 

強迫性障害がどのような病気なのか、患者や家族や周囲をどのように苦しめるのか、治すためにどうすればいいのか。

不幸な事件が起きないためにも、テレビやネットで潔癖症をおもしろおかしく取り上げるよりも、「病気としての潔癖症」である強迫性障害の認識が広まることを願います。

 

強迫性障害がどんな病気か知りたいという方は、以下の2つのサイトが参考になります。
強迫性障害|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省
小さなことが気になるあなたへ [OCD(強迫性障害)、強迫神経症の啓発サイト]

特に、ご主人が統合失調症と誤診されたあと行動療法で改善された方の体験談がいいです。巻き込みへの対応も書かれています。
【私のOCD体験記】第13回 小春日和さん(仮名)夫のOCDに妻も向き合う

精神障害者移送サービスをしている人の本です。サービスは高額なのでなかなか受けられないかと思いますが、精神障害の子供を持つ親の体験や行政の仕組みがわかります。


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