『正しく知る不安障害 ~不安を理解し怖れを手放す~』の感想

『正しく知る不安障害 ~不安を理解し怖れを手放す~』を読みました。精神科医の水島広子さんが書かれた本です。

レビューを見て、この本はかなりいいんじゃないか!?と期待していましたが、期待したとおり不安障害についてわかりやすく丁寧に書かれた良い本でした。

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『正しく知る不安障害 ~不安を理解し怖れを手放す~』の内容

  • 第1章 不安とは何か
  • 第2章 不安障害とは何か
  • 第3章 不安と身体(パニック障害)
  • 第4章 不安と対人関係(社交不安障害)
  • 第5章 不安と認知(認知療法)
  • 第6章 不安と行動(強迫性障害)
  • 第7章 不安とトラウマ(PTSD)
  • 第8章 身近な人との不安とのつきあい方
  • 第9章 怖れを手放す

対人恐怖症やパニック障害といった言葉を頻繁に耳にするようになりました。より複雑化しデジタル化された現在社会の中で、多くの人がなんらかのストレスを心に抱えるようになったためといわれています。

本書では、一般に不安障害と呼ばれている多くの心の病について実例を紹介し、それを引き起こす要因、それを自覚する術、対処方法、治療や克服といったことを、周囲の対応方法なども含めて、一般の人にわかりやすく解説します。

不安とは何か。解決すべき不安と感じるしかない不安がある

まずは『大人のための「困った感情」のトリセツ』に書かれていたのと同じ、不安とは何かが説明されています。


読んだ感想はこちら。
『大人のための「困った感情」のトリセツ』の感想

不安には「解決すべき不安」と「感じるしかない不安」がある。

「解決すべき不安」は情報を集めたり確認をすることで解決できる不安です。

いっぽう、「感じるしかない不安」は未知のもの。わからないものに対する不安は感じるしかありません。

不安を感じた時に、安全確保のためにできることがあれば、できるだけやってみる。それでも残る不安は、「当たり前の不安」として認める。(23ページより)

強迫性障害は安全確保のための行動が過剰になっているので、どこであきらめて「当たり前の不安」として認めるかが大切ですね。

また、不安は不安として表現されるだけではないとのこと。自分の不安でも不安だということに気がつかずに、以下のような違う形であらわれることもあるそうです。

  • 他人に過干渉になる
  • イライラする
  • 攻撃的になる・暴力をふるう
  • 確認行為が多い
  • 仕事や決断が遅い
  • 原因不明の身体症状が出る
  • 身体の調子を過剰に気にする
  • 薬、アルコール、食、自傷行為などに依存する
  • ひきこもり

私は「イライラする」「確認行為が多い」「仕事や決断が遅い」「ひきこもり」は、強迫性障害になってから傾向が出ました。

ああー、そうですよね。不安なときにこういう風になっていましたよ…。そうか、強迫性障害のせいでなるというよりも、これも不安が原因で出る症状だったのか。

これって、年を取るとなりやすいことでもありますよね。年を取ると体が衰えたり死が身近になることで、不安が増えてくるのでしょう。

不安障害の病気と治療法

第3章から第7章までは、不安によっておこる身体症状・対人関係の悩み・行動などを軸に、それぞれが強く出た場合の病気と治療法について書かれています。

  • 第3章 不安と身体(パニック障害)
  • 第4章 不安と対人関係(社交不安障害)
  • 第5章 不安と認知(認知療法)
  • 第6章 不安と行動(強迫性障害)
  • 第7章 不安とトラウマ(PTSD)

不安が身体に出るとパニック障害、対人関係に出ると社交不安障害、そして行動に出ると強迫性障害ということでしょうか。

病気をベースに語るのではなく、不安のあらわれかたとして分けられているので、身近な症状として読めました。

不安障害には共通要素もありますし、例えば、パニック障害において重要なテーマである「身体とのつきあい方」は、他の不安障害の人にとっても知って損はないことです。(あとがきP175ページより)

本当にそうですよね。パニック発作までいかなくても、不安なときには動機や息苦しさを感じます。

私は身体反応を鎮める方法を知ってから不安を軽減できたので、身体反応と対処法が詳しく書かれているのは良かったです。

バイロン・ケイティの「ワーク」

認知行動療法はほかの本でも読んで知っていることが多かったですが、バイロン・ケイティの「ワーク」という手法は初めて知りました。

不安を感じたことに対して4つの質問をし、その答えをひっくり返すことによって自分の勝手な解釈や自動思考に気がつくという手法です。

  1. それは本当ですか?
  2. それが本当だと、絶対に言い切ることができますか?
  3. その考えを信じると、あなたはどうなりますか?
  4. その考えがなければ、あなたはどんな人になりますか?

(116ページより)

例では対人関係に使われていますが、強迫観念にも使えそうです。考え方をほぐして違う考えを引き出しやすい手法だと思いました。

家族や周囲の人は「治療者」ではなく「支え役」を引き受ける

「第8章 身近な人との不安とのつきあい方」には、不安障害の人とどう接したらいいかが書かれています。

私は当事者なので接してもらうほうですが、「『治療者』ではなく『支え役』を引き受ける」という言葉にハッとしました。

特に強迫性障害では、患者が通院できない場合、周囲の人は治療者になろうと考えることもあるかと思います。

「ショック療法」がよいのではないかと思って、本人が怖がっているものに無理やり直面させてみようとする人すらいます。

<略>曝露において必要なのは専門知識に裏打ちされた見通しに基づく、基本的な安心感です。他人主導の曝露には細心のバランス感覚が必要で、トレーニングを受けた治療者が行うことが必要です。(154ページより)

私も病院に行けなかったので、自分で自分の治療者になろうと思い、自分で曝露をやってきました。が、自分でやっていても加減が難しいです。

まして周囲の人が治療するのは、コミュニケーションがしっかりとれていないと難しいだろうと思いました。

ただ、「専門家にまかせてください」と言われても、認知行動療法ができる治療者が少ないというのが悩ましいところです。

『正しく知る不安障害 ~不安を理解し怖れを手放す~』の感想

『完全版 不安のメカニズム』を読んだときに、これをもっとわかりやすく書かれた本があるといいと思いました。『正しく知る不安障害』は、それに近い本でした。


読んだ感想はこちら。
『完全版 不安のメカニズム』の感想。不安障害の治し方がここにある

特に身体症状について詳しく書かれていて、強迫性障害をどう治していけばいいのかわからないときに具体的な行動がわかりやすいです。

治すための行動が強迫的にならないように注意しなければいけませんが、本にもちゃんと「以上のことを完璧にやろうとしない」と書かれていました(笑)

強迫性障害についてはそんなに濃い内容は書かれていません。ページ数も10ページほどで、ほかの強迫性障害の本にも書かれているような内容です。

でも強迫性障害の上の不安というものが何か、どのように対応していけば良いのかが丁寧に説明されているので、強迫性障害の部分が短くても気になりませんでした。

『完全版 不安のメカニズム』などの翻訳本は難しくて手が出なかったという人も、『正しく知る不安障害』なら読めるのではないでしょうか。

パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、PTSDといった不安障害の人にはもちろん、障害までいかなくても不安を感じやすい人にもおすすめです。

ただ、デザインとイラストがいまいちだったのは残念でした。読みづらくはありませんが、特にイラストが好みではなく出版年にしては古い印象の絵柄です。手元に置いておきたい本なので、その部分も気に入ればもっと良かったです。

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