『よくわかる森田療法 心の自然治癒力を高める』の感想

『よくわかる森田療法 心の自然治癒力を高める』を読みました。こころのクスリBOOKSというシリーズです。

森田療法の本は、『神経衰弱と強迫観念の根治法』を読んだきりでした。
『神経衰弱と強迫観念の根治法』の感想。強迫性障害を森田療法で治すための本

いまの時代に病院で治療として受けられる森田療法はどんなものなんだろう?と疑問だったので、読んでみました。私が知りたかったことが丁寧に書かれている良い本でした。

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『よくわかる森田療法 心の自然治癒力を高める』の内容

不安や悩みをなくそうとするのではなく、「あるがまま」に受け入れることで、心の自然治癒力を最大限に生かしていく森田療法。その考え方と実際の方法を、わかりやすく紹介します。森田療法センター長の中村敬先生の監修です。

目次

  • 第1章 心の病気について知る
    (心の病気とはどういうもの?/心の病気の種類と症状 ほか)
  • 第2章 森田療法とはなにか
    (日本で生まれた精神療法/西洋生まれの精神療法との違い ほか)
  • 第3章 基本は入院療法
    (入院療法が基本/入院療法のメリット、デメリット ほか)
  • 第4章 外来で治療を受ける
    (外来で森田療法を受ける/外来森田療法のガイドライン ほか)
  • 第5章 森田療法の考えと生きる
    (森田療法は生き方の道しるべ /森田正馬の教え1 今の自分になりきること ほか)

心の病気と森田療法についての説明

第1章では、心の病気とはどういうものでどんな種類があるかがあげられています。

森田療法の本なので、基本的には森田療法の治療対象となる以下のような病気ですね。統合失調症や依存症は載っていません。

  • うつ病と双極性障害
  • 不安症(不安障害)
    恐怖症、社交不安障害、パニック障害、全般性不安障害
  • 強迫症と関連症郡
    強迫性障害、醜形恐怖症、ためこみ症、抜毛症と皮膚むしり症
  • 身体症状症と関連症郡
    身体症状症、病気不安症(心気症)、医学的疾患に影響する心理的要因、作為症

森田療法は精神障害だけでなく、がんや難治性の病気になったときの心のケアにも使われます。

自殺の理由のトップは健康上の問題です。精神疾患ではなく、体の病気を苦にしての自殺も多いのです。

国としても、体の病気になったら心のケアも受けられる仕組みがあるといいですね。

第2章は、森田療法とはなにかが書かれています。認知行動療法との違いや森田療法が目指すものについて、わかりやすく説明されていました。

森田療法と認知行動療法の違い

神経症的な患者は、不安を排除することばかりに目が向き、逆に不安が増すという悪循環に陥っているのです。(35ページより)

悪循環という言葉は認知行動療法でも出てきますが、そこからどう抜け出すかに違いがあるのですね。

認知行動療法では不安をコントロールしようとして、森田療法では不安を受け入れるのが大きな違いだそうです。

曝露反応妨害法では不安を受け入れたり行動を重視したりするので、認知行動療法の中でも森田療法と似ている部分が多いです。

曝露反応妨害法は「どんどん不安になれ~」という治療法なので、森田療法のほうが穏やかですね(笑)

森田療法の入院療法

森田療法は基本的には入院療法です。

入院生活の中で、最初はとてつもなく大きかった不安と向き合い、作業を進めると、それに没頭するうちに不安や症状がいつの間にか遠ざかっていきます。(52ページより)

強迫性障害は入院といっても投薬だけの病院もあります。また、入院して認知行動療法をする病院でも、家に帰ると強迫観念が出てしまう場合があるのが難しいところです。

森田療法の入院は、規則正しい生活の中で作業をする期間が長いので、治療のための行動がたくさんできるのがいいなと思いました。

まあ、強迫観念もいっぱいわいて大変なのでしょうけれど…。

森田療法の外来療法

外来療法では医師との面接と日記のやりとりが中心になります。

日記で日々の細かな状況を伝え、面接では自由に話し、次への目標を決めていく形が基本です。(92ページより)

私は文章を書くのが好きなので、この治療法は理想的だと思いました。

森田療法でない病院でも、強迫性障害の患者さんは自分の症状をメモに書いて漏らさず伝えようとする人が珍しくないそうです。

正確に伝えなければ不安だという強迫観念がある人にとっては、嬉しい治療法ではないでしょうか。

逆に、文章を書くのに強迫観念がある人や苦手な人だと厳しいですね。日記をサボる患者さんとかいないのかな?

森田療法の日記では、どう感じたかという「気分」ではなく、できた「行動」に注目するのが良いですね。

強迫性障害だとあれが不安だったこれが怖かったと、自分の感情に注目しすぎると振り回されてしまいます。

私も「できるけれどつらい」ではなく、「不安でもできた」と考えるほうが改善しやすかったです。

このブログも書き始めた当初は苦しいつらいという愚痴ばかりでしたが、認知行動療法をやるようになってからは良かったこと・できたことを書くように意識しています。

残念なのは、森田療法を受けられる病院が少ないということです。本に医療機関が載っていますが、こちらのサイトでも病院のリストが見られます。

森田療法医療機関 神経症(不安障害)と森田療法~公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団

『よくわかる森田療法 心の自然治癒力を高める』の感想

現代の森田療法がどういう治療法なのかが、わかりやすく書かれていてよかったです。

私にとって森田療法は、不安はそのままでいい→【ブラックボックス】→行動すれば治る、という印象でした。ネットで体験談などを見ても「とにかく行動すればいい」で、なんだそれという…。

強迫性障害がひどいときには行動しようとしてもフリーズしていたので、動けるはずがない、どうすればいいの?と思っていました。

この本を読んで、治療ではちゃんと行動するための心も教えてくれるのだとわかりました。

不潔恐怖症の患者さんの実例には以下のように書いてあります。

そこで医師は、不安とのつき合い方を具体的に示しました。手を洗いたいなら洗ってかまわないが、気がすまなくても次の行動に早めに移るということです。(104~105ページより)

【ブラックボックス】の中身がわかって、すっきりしました。

私は曝露反応妨害法はやると決意するまでが大変で、決意が固まれば、ほぼできているようなものだと考えています。

森田療法でも行動することを選んだ時点で、意識していなくても変わる決意はできているのではないかと感じました。

ただ、書いてある治療法がとても丁寧なので、本当にここまで細やかな治療が受けられるのだろうか?という疑念は少し浮かんでしまいました。

強迫性障害の治療法は薬か曝露反応妨害法かという中で、入院できちんとした生活をしたり、外来で日記まで使いながら医師と話し合う森田療法は、なかなか魅力的です。

森田療法の考え方や「森田正馬の教え」も載っていて、普段の生活に取り入れることができそうです。

森田療法がどんな治療法なのか知りたいという人には、わかりやすくて良い本でした。

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