彼と洋服屋さんに行ったら、ズボンを3本買うと安くなるキャンペーンをやっていました。
私は強迫性障害になってから、ズボンの試着ができません。自分の腰から太もも、膝にかけては、トイレの便座につく部分なので、気軽に触ることができないのです。着替えのときなどに触ると手洗いをしています。
なので、ズボンではなくほかのものを見ていたのですが、ズボンを見ていた彼が言いました。
「買いたいズボンが2本あるんだけれど3本買うと安くなるんだよ。いっしょに買ってあげるから1本選びなよ」
えええええーっ!
いや、まだズボンの試着ができなくて…と説明をしました。彼は、そうかと言ってから、ちょっと考えて、こう続けました。
「無理にとは言わないけど。そろそろ挑戦してみてもいいんじゃない?」
彼は強迫性障害のことをそんなに理解しているわけではありませんが、テレビで認知行動療法の様子を見たことがあります。たぶん、そのときに覚えた、苦手なことにも向かったほうがいいというのを思い出したのでしょう。
一方、私は思いっきり油断していました。
私は普段は、強迫行為を減らせるようにがんばっています。でもそれは、一人でいるときの話。彼と過ごす休日は、強迫性障害に立ち向かうのも休みという風に考えていたんですね。
なので、彼といるときに積極的な曝露をするということは考えていませんでした。失敗して精神状態が悪くなったら、せっかく彼と過ごしているのに悪いですから。
ズボンの試着は、私の中でけっこう高いハードルです。突然やるなんて無理!!
と、思ったのですが。たしかに彼の言うとおり、そろそろ試着にも挑戦しないと、とは考えていたんですよね。
強迫性障害になってから1年以上ズボンを買っていないし、このまま一生、お店で試着をできないというのも不便です。
なによりも、世間一般の人たちは普通に試着していて、試着中に自分の太ももや下着に触っていても、試着後に手洗いなんてしないのですよね。私だって、強迫性障害になる前はそうだったのですから。
ただ、この腰まわりを触るということに関しては、私はまだまだ克服できていません。腰まわりを触って手洗いをしないことを、受け入れられていないのです。
私は、彼に少し考えさせて欲しいと言うと、一人でお店を出ました。試着をする怖さと、急に試着について判断しなくてはいけなくなったパニックとで、涙が出てきました。強迫性障害になってから判断力が低下していて、素早く判断するのが苦手なんです。
人気のない場所に行って少し泣いて、そして決めました。
試着をしてみよう。
自分でもやってみようとは思っていたんだし、これは良い機会です。いまを逃したら、一度パスした経験ができて、次も簡単にあきらめてしまう。
お店に戻って、ズボンを選び、試着室に入りました。
試着では、覚悟ができていないだけあって、思いっきり回避してしまいました。自分の腰まわりやズボンの内側に触らないようにして着替えたので、時間がかかりました。
なんとか試着をして終了。
お店を出てから、ちょうどトイレに行きたかったこともあり、すぐにトイレに行って手洗いをしてしまいました。
バッグや買物袋や上着は汚れたままの手で触りましたが、それも最小限で、積極的に汚れを広げることはできませんでしたね。
腰まわりに触った手のままで過ごすというのは、まだ無理なようです。
腰まわりを克服することに関しては、前々から考えてはいるんです。でも、難易度が高い(トイレの汚れと直結している)わりに、必要性が低い(着替えのときにしか困らない)ので、なかなか治す気になれません…。