恋人の家でのできごとです。
その日、彼は楽しみにしていたテレビ番組がありました。が、始まる前になって「うんこがしたい」と言い出しました。
間が悪いことに、私もそのときトイレに行こうとしていたんですね。そう告げると、彼は先に行っていいよと言いました。
これが思わぬ強迫の種になってしまったのですよ。
トイレ後に石鹸での手洗いをするかしないか
私がトイレを出て洗面所で手洗いをしていると、彼が来ました。が、まだ手洗いが終わらなくて「ちょっと待って」と言いました。
彼は以前は、トイレ後の手洗いはすべてトイレタンクの上の手洗い器で済ませていました。私が強迫性障害になってから、大のときは洗面所で石鹸を使って手洗いをするように頼み、そうしてくれていたのです。
手洗いを終えてリビングに行くとテレビ番組が始まっており、彼はリモコンとタブレットを手にしていました。
えっ、さっき洗面所に手洗いをしに来たんじゃなかったの?私にとって、トイレのあとに手洗いをしていない手で何かに触るというのは、あり得ない行動です。
びっくりして彼に訊くと、「うん、手を洗おうと思ったけど使っていたから」と答えます。
「手を洗わないの?」と言うと、彼は少しムッとしたように「トイレの中で洗ったけど、じゃあ洗う」と言いました。
私はわけがわからず「もう遅いよ。だってリモコンを触っているじゃない」とつぶやきました。ほとんど半泣きになっていたと思います。
彼はそんな私を見て、洗面所に手を洗いに行きました。
そして戻ってくると、あろうことかリモコンをウェットシートで拭き始めたのです!いままでそんなことをしたことはなかったのに!!
やめて、そんなことをしないで…そう言いたいのに言えませんでした。
彼は「もうリモコンに触らなくていいよ」と言うと、テレビに向かいました。
私は完全に混乱して、頭がパンクしそうでした。彼の手が綺麗なのか汚いのか、リモコンが汚れたのか、まったくわからなくなってしまったのです。
彼の手が綺麗なのか汚いのかわからない
書いていて、不潔恐怖症の人でも私の思考についてこられるか気になります(笑) 彼の行動に対しての私の考えは以下のとおりです。
- 彼が洗面所に手洗いをしに来た(手は汚い)
- リモコンに触った(手は綺麗)
- 洗面所で手洗いをした(手は汚い)
- リモコンを拭いた(リモコンは汚い)
- リモコンに触らなくていいと言った(リモコンは拭いてもまだ汚い?)
しかしこれ以上、彼が楽しみにしていたテレビ観賞を邪魔するわけにはいきません。
私は横になり、一人でぐるぐると考え込みました。頭が痛んで心臓がバクバクしました。彼がリモコンだけを拭いて、タブレットを拭いていないのも気になりました。
また、もしリモコンが汚れたのだとしたら、彼の拭き方では綺麗になったとは思えません。私は何かが汚れたと感じた場合、最低3回は拭くのです。3回というか、満足のいく拭き方1回×3セットですね。
彼の衛生観念を信じる
実のところ、彼がトイレ大のあとに必ずしも石鹸での手洗いをしていないことは知っていました。
必要性を感じたときだけ石鹸で洗うのだろう、それでもいいと納得していました。彼が綺麗だと思うなら信じると決めていたのです。
ところがこのときは、彼が洗面所に来た=洗う必要があるほど汚れた、なのに洗わなかったと思い、パニックになってしまったんですよね。
でも、彼の矛盾した行動を振り返ると。洗う必要なんて感じていないけれど、私がいるから洗おうとしただけだったのでしょう。
リモコンを拭いたのも、私の強迫行為の真似をして落ち着かせようとしただけ。タブレットを拭き忘れているのがその証拠です。
彼が洗う必要がないと思っていたなら、手もリモコンも最初から汚くなかった。
そう思うほうが楽でした。
綺麗か汚いかは曖昧なままにする
この出来事で、もうひとつ苦しかったことがあります。
それは、彼がどう思っていたのか問いただしたい、彼の口から「あのときは石鹸での手洗いは必要なかった」と聞きたいというものでした。
いままでの私なら、時間がたってからでも聞いてしまったと思います。
私は考えがまとまるのが遅いので…。こういう場合に翌日や、家に帰ってから電話をして訊くこともよくありました。彼も慣れていて、訊けば答えてくれます。
それは強迫性障害になる前からしていたことですが、白黒をはっきりさせたいという強迫的な行動だと気がついたのです。
だから今回は訊かずに我慢しました。ちなみにリモコンも、翌日には普通に触ることができました。
正直に言うと、いまでも訊きたいのです。でも逆に、もし彼が手が汚いと思っているのに洗わなかったのだとしたらと考えると、訊くのが怖くなってもいます。
良いのか悪いのかわかりませんが、もう訊けないかな。いえ、ふと訊いてしまうかも?
彼にはつくづく、めんどくさい彼女でごめんなさいと思います。