『コーピングのやさしい教科書』の感想。ストレスは対処法を増やして解消する

『折れない心がメモ1枚でできる コーピングのやさしい教科書』を読みました。

コーピングとは、「きっかけも症状もさまざまなストレスに対して、そのひとつひとつに適切な対処を行っていくこと(本誌3ページより)」。

私のストレスは言うまでもなく強迫性障害です。強迫観念=自動思考と、それを打ち消すためにやりたくないのにやらずにいられない強迫行為ですね。

このストレスを解消したいと思い、読むことにしました。

上の宝島社の本は絶版になりましたが、下の本が金剛出版から復刊されました。

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『コーピングのやさしい教科書』の内容

  1. 自分のストレスを知る7つのステップ!
  2. コーピングでストレスから自分を助ける!
  3. ぜひ試してほしい5つのコーピング
  4. あるがままに受け止め、味わい、手放すマインドフルネス
  5. 「スキーマ」に気づき、より深く自分に近づく

テレビの特集で話題を呼んだ「キラーストレス」。ストレスフルな現代社会にあって、今注目を集めているのが「コーピング」といわれている心理療法です。

本書では、ストレスを解消するために有効な「思考」と「行動」を習慣づけるコーピングの技法をわかりやすく解説。

難しいテクニックは一切なく、ワークページやストレス診断テストなども交えて紹介します。誰でも簡単に試せるコーピングで、心の癒やしを手に入れてください。

本書を実践していただければ「あなただけのストレス」に気づき、「あなただけのコーピング」を手に入れることができます。精神的に追い込まれた、漠然とした不安がある…そんなときに使える「テクニック」が満載。

マインドフルネス、ボディスキャン、呼吸のワーク、葉っぱのワーク…。書き込み式ワークシートつき。日々のストレスから自分で自分を守る今注目の心理学メソッド!!

「あなただけのストレス」「あなただけのコーピング」。自分にしかこの気持ちはわからないと思ってしまう強迫性障害にも効くのかな?

強迫性障害で苦しんでいる人がたくさんいるのは知っていても、身近にいることは少なく孤独を感じるこの病気。

気になっているマインドフルネスのことも書いてあるようで期待が持てます。

Lesson1 自分のストレスを知る7つのステップ!

そもそもストレスとはいったい何か?というお話から始まります。

ストレスとは「ストレッサー」と「ストレス反応」の2つにわけてとらえられる。「ストレッサー」は人間関係や環境、出来事など。それに対する「心と体の反応」が「ストレス反応」とのこと。

つまりストレスは、きっかけも反応も極めて個人的な体験であり、「こういう問題にはこう対処しなさい」と、一般化できないものなのです。そのためコーピングでは、自分にとっての「ストレッサー」と「ストレス反応」に気づくことがとても大切な第一歩になります。(12-13ページより)

家族や友達に相談したときに「そんなの誰にでもあるよ」と言われて、「気にする必要はないんだな」と思えるときと、「私も私で辛いのに」ともやもやするときがあります。

ストレスは極めて個人的な体験と言ってもらえて、すっきりしました。私のストレスは私だけのもの。べつに大切にしたいわけじゃないですが、それでいいんですよね。

自分のストレスに気づくことを、心理学の世界では「セルフモニタリング(自己観察)」といいます。

<中略>

ストレス反応に対しては、「認知」「気分・感情」「身体反応」「行動」の4つに分けて考えていくことになります。(16ページより)

「ストレッサー」と「ストレス反応」は「ストレスの悪循環」をうみます。それを断ち切るために「モニタリング」をしていきます。

例をもとに自分のストレスをモニタリングして、どのように「認知」「気分・感情」「身体反応」「行動」に分ければいいのかが説明されます。

分類することで、自分が何にストレスを感じているか、どこに問題があるかがはっきりと見えてきます。

私はレッスン1だけで、あああごめんなさい、私が偏った受け止め方をしていました!という気持ちになりました。

この本、やさしい顔をして深いかも?

Lesson2 コーピングでストレスから自分を助ける!

コーピングとは、<中略>簡単に言えば、「このストレスをどうにかしたい!」と思って何かをすることですね。(52ページより)

これは日頃からしていますが、何かをしてもどうにもならないことが多いです。

コーピングレパートリーとは、「手持ちのコーピングすべて」のことです。

どんなにしょぼいものでも、とにかく数を増やすことがコーピングの鉄則だとお話ししましたね。つまり、「質より量」と言いかえることもできます。

わたしはいつも「レパートリーを100個はつくってください」とお願いしています。(56ページより)

自分なりの対処法を持ってはいても、たしかにワンパターンで行きづまるために解消しきれていない!

「ストレスが強すぎて勝てないんだ」と諦めていたけれど、もっとほかの方法もあったのかもしれません。

「しょぼいもの」という表現がハードルを下げて気楽にしてくれます。実際に、簡単にできるコーピングやユニークなコーピングが紹介されています。

すぐに試せるように時間とお金がかからない「コストパフォーマンス」も重視するべきだそうです。

コーピングにも種類があって、ストレスの原因に働きかける、自分の感情を整理する、頭の中で考える、行動を伴う、などに分けられるそうです。

ひとつのストレスに対して、原因に働きかけるか感情を整理するか?で複数のコーピングを考えられるとレパートリーも増えますね。

ほかにも、コーピングを編み出す方法がいろいろと紹介されています。

Lesson3 ぜひ試してほしい5つのコーピング

コーピングの中には、だれでもすぐ実践でき、絶大な効果を発揮してくれるうえに、コストパフォーマンスにもすぐれている「万能選手」的なものもあります。(94ページ)

そ、そんないいものが!?と思わず半信半疑になりましたが、以下の5つが紹介されていました。

  1. 頼れる人を「サポートネットワーク」で可視化
  2. 「ポジティブなイメージ」を用意しておく
  3. 自分をねぎらってみる
  4. 「自分のいいところ」を見つける
  5. 第三者になりきる「フレンドクエスチョン」

この章を読んで、あらためてこの本すごいなーというか、著者の伊藤絵美さんを尊敬しました。

「私には頼れる人なんていないから無理」と思ったのに、ちゃんと解決策が書かれているのです。その発想は実に豊かでユニークです。

コーピングを身につけていらっしゃるからこそ、豊富な方法を示せるのでしょう。

Lesson4 あるがままに受け止め、味わい、手放すマインドフルネス

マインドフルネスとは、「今・ここ」で体験していることに気づき、あるがままに受け止め、味わい、そして手放すための心のエクササイズです。

<中略>

さまざまな出来事や感情のひとつひとつに振り回されることがなくなり、ストレスフルな環境にも、否定的な気持ちにならずに済むようになります。

だからこそわたしは、マインドフルネスを「最強のコーピング」だと考えているのです。(112ページより)

強迫性障害の治療法として、マインドフルネスも効果的だと言われています。マインドフルネスのやり方も書いてあって得した気分です。

しかも、1章だから詳しくは書かれていないだろうと思ったら、12個ものワークが書かれていました。

どれもわかりやすく、「回転ずしのワーク」「ロボット掃除機のワーク(ル〇バ?)」などユニークなものもありました。ユニークだからといってイメージしにくくはなく、親しみやすいです。

Lesson5 「スキーマ」に気づき、より深く自分に近づく

スキーマ(Schema)を直訳すると「図解、図式」という意味ですが、心理学では「まとまって記憶されている情報や知識」のことを指します。(144ページより)

<中略>

Lesson5でクローズアップしたいのは、「早期不適応的」スキーマです。また難しい単語が出てきましたが、これはつまり、幼少期の生活環境によって形成される、ちょっと困った(不適応)スキーマのことです。(145ページより)

<中略>

自分のスキーマに気づき、その作用を緩和できれば、ストレス自体の発生を軽減できることになるのです。(146ページより)

スキーマは、認知行動療法(強迫性障害の曝露反応妨害法とは違う、うつ病などに使われるほう)でも出てくる言葉です。私は、人によって違う価値観や考え方の癖のようなものととらえています。

以下の9個の代表的なスキーマと、その思考パータンがあげられています。

  1. だれにもわかってもらえない
  2. ダメな自分が恥ずかしい
  3. 自分が犠牲になればいい
  4. だれかに頼らないと不安だ
  5. 自分は変わり者だ
  6. 完璧でなければならない
  7. どうせうまくいきっこない
  8. 自分は特別な存在だ!
  9. もっともっとほめられたい!

私にあるのは、1、5、6かな。強迫性障害の苦しみをわかってもらえないと感じたり、こんな病気になった自分は変わり者だと思ったり、完璧を求めたりしています。

スキーマに気づき、その影響を少しずつ弱め、手放していく。そのためにセルフモニタリングとマインドフルネスを使っていきます。

自分のスキーマが活性化されてきたと感じたら、しっかりとそれに気づき、観察し、「ああ、今自分の中のスキーマが動き出した」「この自動思考もスキーマのしわざなんだな」と、受け止めてください。(168ページ)

!!!

これって、『完全版 不安のメカニズム』『新装版 不安でたまらない人たちへ』などで学んだ、強迫観念への対処法と同じではないですか!

強迫観念がわき起こったときに「ああ、また強迫観念が来た」「これは強迫性障害のせいで感じていることだ」と考えるやり方です。そうか、強迫性障害=スキーマとして受け止めればいいんですね。

『コーピングのやさしい教科書』の感想

本のレイアウトとイラストがやさしい雰囲気で、文章もわかりやすくとても読みやすかったです。

反面、内容はとても充実していて骨太です。コーピングもマインドフルネスも方法が豊富で、この本自体が「コストパフォーマンスにすぐれている」と思いました。

コーピングやマインドフルネスは試したいし、スキーマも整理したいし、やってみたいことがたくさん載っていてわくわくしました。

帯に書いてある「だれでも気軽に続けられるストレス対処法が満載!」という言葉通りでした。

私もそこそこ本を読んでいて、満載と書いてあっても10のうち2~3個いいものがあれば儲けものというくらいの意識でいます。でも、この本は隅々まで使えて本当に満載です。

ただひとつだけ突っ込みたいのは、「メモ1枚」じゃ足りないということでしょうか(笑)

手元において何度も読み返したい本の一冊になりました。

上の宝島社の本は絶版になりましたが、下の本が金剛出版から復刊されました。

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