『反応しない練習』の感想。仏教は悩み解決のエキスパート

『反応しない練習』を読みました。仏教の教えをもとに、悩みを解決する方法を書いた本です。

仏教――宗教というと抵抗がある人もいるかもしれません。私は祖母が熱心な仏教徒だったので、仏教の教えは身近にありました。

あ、祖母が入信していたのは無理な勧誘やお布施のない実直な団体で、私に入会をすすめたことは一度もありません。

母は祖母に付き合って名ばかりの会員になっていましたので、家には会報誌が届けられていました。

私は会報誌を読んで、お釈迦様(仏教の開祖であるブッダのことです)の教えってけっこういいな~くらいの感覚で育ちました。

森田療法の本を読んだときに仏教に通じるものがあると感じたので、ひさしぶりに仏教に触れたくなり、『反応しない練習』を手に取りました。

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『反応しない練習』の内容

ブッダは実は、「超クール」――“独立派”出家僧が教えるあなたの悩みを解決する「原始仏教」入門!

誰かの言葉にすぐ反応。SNS、ツイッター、ネット記事に常に反応……毎日、ムダな「反応」をしていませんか?

すべての「苦しみ」は、自分が「反応する」ことから始まっています。それを理解することが、悩みを解決する第一歩です。

その事実と、具体的な方法論を教えてくれるのは、2500年前の悟った人、ブッダ(原始仏教)。本書では、原始仏典を紐解きながら、現代人の人生に活かせる合理的な考え方を紹介します。何歳からでも始められる――「感情を、上げもせず、下げもしない」ブッダの方法。

目次

  • 第1章 反応する前に「まず、理解する」
  • 第2章 良し悪しを「判断」しない
  • 第3章 マイナスの感情で「損しない」
  • 第4章 他人の目から「自由になる」
  • 第5章 「正しく」競争する
  • 最終章 考える「基準」を持つ

仏教は悩みや苦しみから抜け出す方法を学ぶ宗教

仏教を知らない人にとって、仏教のイメージはどんな風でしょう。苦しいときの神頼み?お経をとなえれば天国に行ける?

実は、仏教はお釈迦様であるブッダの教えを学ぶものなのですよ。

ブッダの考え方とは、悩みがあるという“現実”を見すえて、その“原因”を理解して、解決への“方法”を実践しようという、最先端の医学にも似た明快な処方箋なのです。(20ページより)

強迫性障害を治すためにたくさんの本を読んできましたが、「お釈迦様も同じことを言っていたなあ」と思うものが多くありました。

本書の中から、強迫性障害や不安に役立ちそうなものを紹介します。

妄想を「上手にリセットする」方法がある

仕事や家事に「追われている(あれもこれもやらなきゃ)」と感じたり、「この先どうなるのだろう」と不意に不安に駆られたり、悲しい過去を振り返って落ち込んでしまったりという心境もまた「妄想」から来ています。(42ページより)

妄想…妄想かぁ。たしかに、何かをしていても頭の中では別のことを考えているという状態は多いです。

強迫性障害の最中はほとんどそうでした。「どうしてあんなことをしてしまったんだろう」「こうなったらどうしよう」という過去や将来の不安ばかり考えていました。

妄想をリセットする基本は、「今、妄想している」と客観的に言葉で確認することです。(42ページより)

さらに、妄想と現実の区別をつけること、妄想と現実の感覚の違いを意識することも、妄想から抜け出す秘訣だそうです。

認知行動療法のマインドフルネスやACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)にも取り入れられている方法ですね。

「ない」ものを「ある」と勘違いしないために

「判断」――決めつけ、思い込み、一方的な期待・要求――は「執着」の一種です。

<中略>

どんな判断であれ、「執着」してしまうと苦しみが生まれます。というのは、現実は常に「無常」――変わりゆくもの――だからです。(58ページより)

諸行無常(しょぎょうむじょう)キター!と、盛りあがってしまいました。

諸行無常とは、世の中の物事はたえず移り変わり、変わらないものはないという意味です。仏教的に言うと、永遠の愛とかもないのです(笑)

執着が無駄なのは、変わりゆくものだからなのですね。

強迫観念も決めつけや思い込みであり、「判断」「執着」です。これらを手放すには、シンプルに「役立つかどうかで考えていい」とのこと。

なぜ人は判断するのかというと、わかった気になれる気持ちよさと、自分は正しいと思える快楽があるそうです。

判断のメリットを覚えておくと、逆に手放しやすいと思います。何かをやめるときには、そのメリットを捨てる覚悟が必要ですから。

「こうでなければ」という、自分の人生や、相手への期待も、それだけならただの「判断」。それはアタマの中にしか存在しないから「妄想」です。

妄想にすぎない「判断」に執着して、今なお、自分や相手を苦しめている――それが真実の姿です。(59ページより)

強迫観念は、いかにも役立つ・必要そうなふりをするので難しいのですよね。でも一方で、無駄な「妄想」だということもわかっています。

強迫観念がわいたときにしっかりと、「頭の中だけの妄想なんだ」と切り離せるようにしたいです。

「妄想にすぎない「判断」に執着して、今なお、自分や相手を苦しめている」という部分は、身にしみました…。

強迫性障害のときは、無駄なことはわかっている、それでも強迫行為をやらずにいられないんだ!と考えていました。

けれども強迫行為をしている時点で、わかっていない、「判断」を手放せていなかったのだと思いました。

私がくだした「判断」は、執着として行動にあらわれていたのでしょう。

『反応しない練習』の感想

ボリュームとしては、ごく普通の単行本です。文章はさらさらと読みやすいです。

あらためて仏教に触れてみて、やはりお釈迦様の教えは心を楽にしてくれて良いと思いました。

私が自分で認知行動療法をできたのも、心の根底に仏教の教えがあったから、強迫観念を手放すことやコントロールを諦めることを受け入れられたのかもしれません。

また、世の中に出ている悩みの解決方法の多くが仏教の影響を受けていることを再確認しました。

悩みがある人はもちろん、マインドフルネスやACT、森田療法に興味がある人も、それらの元になっている基本の書として読んでおくと理解が深まると思います。

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