2018年7月に、千葉県柏市で夫が妻を殺害し、母親とともに実家の庭に死体遺棄した事件の被告人質問が行われました。
夫から妻の強迫性障害についても語られました。
被害者である妻の強迫性障害の症状
※引用中では実名を掲載したくないため被害者を○○さん、被告を□□被告とします。
「百回以上殴られた」妻殺害の夫が法廷で主張した“妻の暴力・暴言の数々”・・・情状として考慮されるのか?
他に、弁護側からの質問に対して□□被告が主張したのは、殺害された妻・○○さんが日常的に行っていたという、暴力・暴言の数々だった。
<中略>
弁護側が主張していることは「なぜ殺害したか」です。妻の○○さんは強迫性障害と診断され、極度の潔癖症でした。その○○さんから課せられたルールを守らないと暴力を受ける、それが殺害の動機の1つであると主張しています。
今回の被告人質問で、潔癖症ならではのルールが非常に厳しいものだったことが明かされました。
<○○さんの“潔癖ルール”について>
・わりばしで電気をつける
・ゴミ箱、トイレ、ドアノブを触る際はポリ手袋を使用
・ビジネスバッグを触ってから食器棚に触れた際、食器棚を30分以上拭かされ、会社に遅刻<中略>
100枚入りのポリ手袋を1週間に3箱から5箱使わなければいけないくらいの量だったそうです。
「潔癖症ならではのルールが非常に厳しいものだった」とありますが、強迫性障害だとしたら珍しくない症状です。
「100枚入りのポリ手袋を1週間に3箱から5箱」というと、1週間で最低300枚、1日で約42枚。1時間に約2~3枚は使っていた計算です。
「わりばしで電気をつける」は無いわーという人でも、ティッシュやラップを使ったり、スイッチを触ったあと手洗いをしたり、除菌ウェットティッシュで拭いていたら同じですよね。
妻の強迫性障害は治療できなかったのか
強迫性障害という精神疾患なら、治療できなかったのかと思われる人もいらっしゃるでしょう。
強迫性障害に限らず、心の病は患者本人が病気だと認めたがらず、病院に連れていくことが難しいです。
患者が治療を拒否する理由は以下3つが考えられます。
1.病院に行きたくない
病院に対して恐怖心がある。私はこれでした。
排泄物や体液に恐怖があったため、尿検査や血液検査が行われている場所に行くというのが怖かったです。
2.治療を受けたくない
薬や認知行動療法によって今より悪化するのが怖い。
強迫性障害では悲観的になるので、治療がうまくいかない場合を考えてしまいます。
強迫性障害は専門的な治療が必要ですが、それを受けられる病院は少ないです。
さらに、治療中は恐怖と向き合うので、取り掛かれない人も多いです。
適切な治療を受けることができて、患者がすごく頑張れば治るという感じです。
3.強迫性障害を治したくない
強迫行為を必要なことだと信じているのでやめたくない。
強迫性障害は自分が必要でない行為をしているのを「わかっちゃいるけどやめられない」病気だと言いますが、私は「わかっていると言いつつわかっていない」でした。
強迫性障害は、患者に治したいという気持ちがなければ治せません。
私は強迫性障害のままでいるよりは治すほうがいいと思って治しました。
そのあたりの記事はこちらのカテゴリーをご覧ください。
強迫性障害を治すための考え方
まあ、ごちゃごちゃと葛藤しないと治せなかったのです…。
不合理な事件を目にすると「こうすればよかったのではないか」「ああできたのではないか」と考えてしまいますけれど、できるならやっているという場合がほとんどなのでしょう。
妊娠・出産時期の産後うつや強迫性障害は質的栄養失調の可能性
妻が強迫性障害と診断されたのは妊娠・出産後だそうです。このタイミングで強迫性障害になる人は多いです。
いままでは「環境の変化」という漠然とした理由でひとくくりにされていました。
しかし、『うつ消しごはん』『薬に頼らずうつを治す方法』の著者で精神科医の藤川先生は、うつ病・パニック障害・強迫性障害などは鉄不足による隠れ貧血が原因で、特に出産後の女性には多いと言われています。
藤川先生の『精神科医こてつ名誉院長のブログ』にも少し症例が載っています。
精神科医こてつ名誉院長のブログ「不安障害 強迫性障害」の記事一覧ページ
ほかのお医者さんからも、産後うつと貧血について以下の記事が公開されていました。
妊娠中から産後にかけての女性の死亡原因で最も多いのは、実は自殺です。国立成育医療研究センターの調査では、2015年から16年にかけて、102人もの妊産婦さんが自殺していたことがわかっています。
<中略>
そんな中、国立成育医療研究センターのグループは4月、出産から数日後の血液検査で貧血があることが産後うつのリスクになるという研究結果を発表しました。この研究では、約1000人の妊婦さんを対象に、産後1カ月の時点で産後うつのスクリーニングテストに回答してもらいました。日本では、このテストの点数が9点以上だと産後うつの可能性が高いと判定されます。その結果、出産後4~6日の血液検査で貧血だった女性は、そうでなかった女性に比べて点数が9点以上の割合が高く、そのオッズ比は1.63倍でした。この研究での貧血はヘモグロビン濃度10グラム以下と定義されていますが、ヘモグロビン濃度が9.2~10.1と軽度の貧血であったグループでも、産後うつの割合が増加していました。
女性が妊娠や出産でイライラしたり神経質になるのは当たり前と見られていました。
でも最近では、脳内ホルモンや栄養不足といった原因が考えられるようになりました。
心の不調を感じたら、まずは栄養を見なおしたいです。
出産後は子供第一になってしまいましたが、子育てをする母親の身体や心の管理も大切です。
病院での健康診断や指導で解決できればいいのですが、まだそこまで進んでいないので、本人や家族が勉強して予防する必要がありますね。
心の不調と質的栄養失調については以下の本がおすすめです。