『パニック障害の不安がスッーと消え去る17の方法』の感想

『症状改善率98%のカリスマ心理カウンセラーが明かす パニック障害の不安がスッーと消え去る17の方法』を読みました。

帯にある「薬や認知行動療法より効果的」という文字と「最新メソッド」に惹かれて読みたくなりました。

読んだ結果、微妙な本でした。

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『パニック障害の不安がスッーと消え去る17の方法』の内容

不安・パニック障害は、「考え方を変えて治す」から「心・身体・遺伝子へのアプローチで消す」へ!

自身も苦しみ、克服し、後にカウンセラーとして1万人を診た著者が、その経験から得た自分でできる“すぐラクになれる方法”

目次

  1. 第1章 薬もダメ、認知行動療法もうまくいかない…どうしたらいいの?パニック障害
  2. 第2章 無意識にアプローチするしかない!こうして私は克服した
  3. 第3章 発作を消すのがいちばん!「自分で症状をラクにする技術」を身につけよう
  4. 第4章 知っておきたい回復のステップ よくなる過程には波がある
  5. 第5章 心・身体・遺伝子に働きかける方法 自己暗示で不安はどんどん軽くなる
  6. 第6章 ひとりで簡単にできる!今すぐバクバクが消える!不安をスーッと消し去る17のメソッド

著者 弥永英晃さん

私は、日本初の「薬に頼らないカウンセラー看護師」ということで、少しだけ有名なようです。おかげさまで芸能人、政治家、弁護士、医師から一般の方まで幅広く、全国各地の方々がクライアントになってくださり、現時点ではなかなか予約をお取りできない状況です。(17ページより)

この自己紹介で、心のシャッターが半分閉まりました。

私は顧客や知人に権力者や有名人がいるとアピールする人は信頼しません。本人の実力が本物ならば、そういう必要はありませんから。

しかし、著者は看護師からカウンセラーになった人で、「心理・医療の経験年数は18年、現在までに1万人のカウンセリング経験があります」ともあります。

カウンセラーとしての経験年数を書いていないのが気になるところですが、読み進めることにしました。

パニック障害はうつ病よりも患者数が多いという記述が疑わしい

パニック障害を発症する人の割合は、100人に4人です。4%ですから、日本の総人口から考えると、約480万人が悩んでいる、あるいはパニック障害の予備軍であると考えられます。

厚生労働省の「平成26年患者調査(2014)」によると、うつ病などの気分障害で医療機関を受診した総患者数は111万6千人だそうです。

つまり、うつよりも多いのがパニック障害であり、いかによくある病気かわかると思います。(27ページより)

えーっ!いやいやいや…。

そんな話は聞いたことがないので調べました。

どうやら「一生の間に」パニック障害を発症する人と「1年間に」うつ病などの気分障害で医療機関を受診した人の数を比較しているようです。

「パニック障害を発症する人は4%」の根拠を探したら、厚生労働省によるとパニック障害の生涯有病率(一生のうちに1回以上発症する人の割合)は1.6~4.7%とされていました。

うつ病の患者数の根拠とされていた「平成26年患者調査(2014)」では、「主な傷病の総患者数」の中の「うつ病などの気分障害」は111万6千人でした。

「主な傷病の総患者数」の分類は結核や悪性新生物(がん)などがあり、「うつ病などの気分障害」のほかに精神疾患にあたるのは「統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害」だけでした。

「うつ病などの気分障害」の中に、パニック障害の患者数も含まれていると思われます。

つまりこの本では「一生の間にパニック障害を発症する人」と、「1年間にうつ病+パニック障害などで病院を受診した人」を比較しているのです。

「うつよりも多いのがパニック障害」というのは疑わしく、間違っている可能性が高いです。

参考
パニック障害の更に詳しい情報|パニック障害・不安障害|心の病気を詳しく知ろう|みんなのメンタルヘルス総合サイト
平成26年(2014)患者調査の概況|厚生労働省

「認知行動療法より」と言いながら暴露療法がある

著者はパニック障害になったことがあり、薬も認知行動療法も自分には向かなかったと言われています。

帯にも「薬や認知行動療法より効果的」と書かれています。

しかし、「パニック障害を治すアプローチ」の中には、暴露療法が入っています。

暴露療法以外の治し方を知りたくて本を手にした人は、がっかりするのではないでしょうか。

暴露療法は認知行動療法の手法のひとつです。著者はコラム法だけを認知行動療法と書いているようですね。

催眠療法がいいと言われても受けられない

催眠は相手にコントロールされたり、意識がなくなるものでもありませんでした。

<中略>

たとえば、映画を見ていて映画に没頭して泣いてしまったり、眠りに落ちる前のまどろみの中にいる、そんなリラックスしている状態が催眠状態なのです。(45~46ページより)

催眠療法は患者を無意識状態にしてその間に治療をほどこすものかと思っていましたが、違うんですね。

究極にリラックスした状態でカウンセリングを受ける療法だそうです。

じゃあ催眠療法をどこで受けられるの?という話になると、難しい。本書にも「私から見て、正直お勧めできる催眠療法士はとても少ない状態です」と書かれていました。

催眠療法よりもVRを使ったバーチャル暴露療法のほうが、将来的に受けやすくなりそうです。

パニック障害の広場恐怖に対しては、「メンタルリハーサル法」という催眠の中で徐々に苦手な場所にいることに慣らしていき、それを潜在意識に植え付けていくという方法があります。(50ページより)

「メンタルリハーサル法」は頭の中でイメージしてみる方法です。暴露療法や曝露反応妨害法でも使われますので、催眠療法を併用しなくてもできます。

遺伝子と自己暗示と祈りと瞑想とオキシトシン

村上和雄さんの『生命の暗号』という本から、遺伝子の研究が引用されています。

このように「笑うという行為」が免疫力を上げたり、体内でガンを抑制する遺伝子を助けていることがわかります。(105ページより)

が、だんだん笑いだけでなく祈りや瞑想も良く、脳内ホルモンのオキシトシンも分泌されるという話になっていき、ごちゃごちゃしていきます。

そして、祈り、瞑想、感謝、自己暗示、自己催眠などのアルファ波が発生している状態とは、まさしく、潜在意識とつながった状態なのです。(110ページより)

遺伝子を持ち出して医学的な根拠としたいようですが、いまいち響きませんでした。

単に行動を変えて脳内ホルモンに働きかけているのを、遺伝子だとか潜在意識に関連づけているように見えました。

パニック障害のかたも強迫性障害と同じように、暴露療法ができない自分の無力さを感じることがあるでしょう。

そういう行き詰った気持ちのときに、あなたの中に眠っているものを目覚めさせればうまくいくよと言われると、期待してしまいますよね。

瞑想や自己暗示は良いのでしょうけれど、どうも話を大きく見せたいように感じました。

不安をスーッと消し去る17のメソッドはよかった

ここまでで心のシャッターが8割がた閉じましたが、「不安をスーッと消し去る17のメソッド」はよかったです。なんか悔しい(笑)

「ありがとう」とか「自分で暗示をかける」系の自己啓発っぽいメソッドや、呼吸法・マインドフルネスなど結局それかい的なメソッドも含まれていて、目新しいものばかりではありません。

また、遺伝子に働きかけているというのも信ぴょう性がありません。

が、ツボ押し、タッチセラピー、タッピングセラピー、アイムーブメントセラピーなどはいいですね。

この章は全体の1/3くらい。ここだけを詳しく書いて1冊にしてくれたほうがよかったです。

『パニック障害の不安がスッーと消え去る17の方法』の感想

読み落としたのかもしれませんが、どれが最先端の方法なのかわかりませんでした。

本書は「考え方を変えること」にアプローチするのではなく、「潜在意識や脳、遺伝子(DNA)」に働きかけていきます。

これは、脳科学、心理学、遺伝子学、医学などで解明された最先端の方法であり、それを集めて自分自身で不安を抑える本としてご紹介するのは、日本では初めてかもしれません。(4ページより)

この言葉に釣られて期待が高まりましたが、パニック障害とうつ病の患者数の部分の調子だと、全体的に信頼性は低いと感じました。

とはいえ、肝心の「17のメソッド」は、まあまあよかったです。

パニック障害の患者さんにとっては、著者がパニック障害の経験者であることも心強いでしょう。

パニック障害だけではなく強迫性障害の人でも、まだあまり不安を消す方法を知らない人は読んでみてもいいと思います。

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