うつ病や不安障害の原因として、脳内のセロトニンが減っているという仮説があります。
仮説ではありますが、薬物療法でもセロトニンを増やすSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われています。
となると、セロトニンって食べ物では増やせないの?と思いますよね。
セロトニンの元になるのはトリプトファンですが、調べたところ、それよりも鉄やタンパク質を摂るほうが効果があるとわかりました。
セロトニンの元になるトリプトファンは普通の食事で摂れる
セロトニンの材料になるのは、必須アミノ酸である「トリプトファン」です。
トリプトファンは通常の食事をしていれば十分に摂取できるので、意識的に摂る必要はありません。
トリプトファンの1日の目標摂取量は、体重1kgあたり2mg。体重50kgなら100mg、体重60kgなら120mgです。
トリプトファンは納豆1パック45gあたり約109mg、肉類100gあたり約150~250mg含まれています。
体重60kgの人なら、1日に納豆1パックかお肉100gで必要量が摂れるのです。
そのほかにも、ごはん、そば、乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)などにも多く含まれています。
一方、バナナに含まれているトリプトファンは100gあたり10mgだけ。それほど多くないんですね。
バナナにはトリプトファンに加えて、セロトニンを作るのに必要な炭水化物とビタミンB6も含まれていて、総合的に栄養が摂れるのと手軽に食べられるのでおすすめされています。
食欲がない人や食事を用意するのが難しい人には足しになるという程度でしょう。
セロトニンを作るには鉄とタンパク質が必要
セロトニンをはじめ、ノルアドレナリン・ドーパミンなどの神経伝達物質を作るには、鉄とタンパク質が必要です。
鉄が不足していると、健康診断で貧血だと指摘されます。
逆に言えば、指摘がなければ貧血ではない=鉄不足でもないと思いがち。
しかし、『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)』の著者である藤川医師によると、健康診断で検査の対象になっていない「フェリチン」が不足している「隠れ貧血」があるそうです。
以下の症状が当てはまる人は鉄不足かもしれません。
鉄不足の症状
- イライラしやすい。集中力低下。神経過敏。些細なことが気になる。
- 立ちくらみ、めまい、耳鳴り。片頭痛。
- 節々の痛み(関節、筋肉)。腰痛。
- 喉の違和感(喉が詰まる)。
- 冷え性。
- 朝なかなか起きられない。疲れ。
- 出血(アザ)。コラーゲン劣化(肌、髪、爪、シミ)。ニキビ、肌荒れ。
- 不妊。
- レストレッグス症候群(RLS=ムズムズ脚症候群)。
やたらと氷を食べる。…など。(『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』96~97ページより)
鉄分は食事で十分に摂るのが難しい
鉄は食事で十分に摂るのが難しいです。
鉄の1日の推奨摂取量は、成人女性は10.5~11mg、成人男性は7~7.5mgです。
鉄分の多い食品
- 豚レバー60g:7.8mg
- 鶏レバー60g:5.4mg
- 牛レバー60g:3.6mg
- 牛肉(ひれ/輸入)100g :2.8mg
- あさり100g:3.8mg
- かつお100g:1.9㎎
- いわし(生)100g:1.8mg
- さば水煮缶100g:1.6㎎
成人女性でしたら1日に牛ひれ肉375gで必要量が摂れます。
でも、毎日そんな食事をするのは難しいですよね。
鉄分が多いのはレバーですが、レバーは食べすぎるとビタミンAの過剰摂取となるので注意が必要です。
セロトニンを増やす食事は高タンパク質・糖質制限+鉄
セロトニンを増やすには貧血の解消が必要。
まずは高タンパク質・糖質制限の食事から始めるのがおすすめです。
食事だけで改善できなければ、鉄材や鉄サプリでの補給が必要でしょう。
藤川医師は、ブログで以下のように書かれています。
鉄不足=タンパク不足、と同義。
特に、卵、肉、魚などの動物性タンパク不足。<中略>
タンパク質と鉄の両方が増えて初めて元気になる。
鉄とタンパク質は常にセットで考えないといけない。
私は藤川医師が初診患者に指導しているという「ゆるい糖質制限」を心がけています。
初診時に高タンパク/低糖質食を指導すると薬の効きが断然良くなる
すなわち、毎日卵、肉、魚を食べる
卵は複数個、目標はMEC量
ご飯、パン、麺は今までの半分にする
ジュース、お菓子は止める
間食は、ゆで卵、チーズ、ナッツ、ハム、ソーセージ、我慢できなければ果物
MECとは肉(Meat)、卵(Egg)、チーズ(Cheese)を中心に食べる「MEC食」のことです。
MEC食の1日当たりの摂取量
- 肉 200g
- 卵 3個
- チーズ 120g
女性はMEC食の量はなかなか食べられないので、補足でプロテインを飲むことが推奨されています。
おすすめされているプロテインのお試しセットはこちらです。
セロトニンを増やしたいと思うとトリプトファンに注目しがちですが、鉄と動物性タンパク質が大切なんですね。
私は強迫性障害の悪化時には肉・魚・卵といった生ものにも強迫観念があり、あまり動物性タンパク質を摂っていませんでした。
短期間で体重が減ったこともあり、治すにあたりまず「肉や魚も食べなければ」と思いました。正解だったのかもしれません。
強迫性障害はよくなりましたが、引き続き鉄とタンパク質の不足には気をつけます。
こちらの本も読みやすかったです。