『家族と取り組む強迫性障害克服ワークブック』を読みました。「ワークブック」という言葉に惹かれて読んだのですが、読む人を選ぶ感じでした。
『家族と取り組む強迫性障害克服ワークブック』の内容
強迫性障害(OCD)はしばしば「隠された」精神疾患となります。OCD症状を恥ずかしい・他人には理解されないと考え、自分だけで苦痛を抱え込み社会から孤立してしまうのです。OCDを倒すには患者さんと家族、協力者が共に闘うこと、社会とのつながりを持ち続けることが重要です。本書はあなたの大切な人をOCDから守るため、認知行動療法に基づき、家族の相互関係におけるパターンとその機能の理解を深める実践ワークブックです。
- 序 章
- 第1章 OCDの定義
- 第2章 OCDの治療
- 第3章 OCDの内部構造
- 第4章 OCDではなく,その人を支える
- 第5章 家族との取り決めの必要性
- 第6章 取り決め,家族問題の解決法
- 第7章 家族の取り決めを作る
- 第8章 親,兄弟姉妹,友人:回復期におけるパートナー
- 第9章 あなた,あなたのパートナー,そしてOCD:3番目の邪魔者について
- 第10章 家族レジリエンスの強化
- 第11章 将来への展望
1章から3章までは強迫性障害についての説明で、4章から本格的に家族の取り組みについて書かれています。
第4章 OCDではなく,その人を支える
OCDの家族が陥りやすい巻き込まれの罠について書かれています。OCDの患者が家族や周囲の人に強迫行為を手伝わせることを「巻き込み」と言います。
巻き込まれることで,OCDを持つ人を助けるのではなく,OCDを助けてしまうのです。(73ページより)
患者が苦しんでいれば、助けてあげたくなるのは家族として当たり前の感情です。しかし、強迫性障害ではそれが患者のためにはならないのです。
私は「巻き込み」には、家族の強迫観念も含まれるのではないかと考えています。
家族もまた、苦しんでいる人を目の前にして何かせずにはいられない。見守ったり患者本人に任せるという不安を抱えることができない。
家族もリスクを取り、不安を抱える訓練をしなくてはならないのですよね。
あなたの大切な人がすることで恥ずかしさを感じたり,普通でない行動に対して,あなたが耐えてしまったりする状況について書いてください。
あなたが自宅で我慢している,不快で害をもたらすような生活状況について書いてください。(87ページより)
こういった質問があり、書き込めるようになっています。
なんかもう、本当にごめんなさいという気持ちになりました。私も恋人に外で恥ずかしい思いをさせたり、随分と我慢をしてもらっています…。
例えば、一緒に歩いていて道に犬のフンなどを見つけると、立ち止まったり戻ったりして確認せずにはいられません。そんなものまじまじと見たくはないのですが、踏まなかったか、汚れがつくほど近寄らなかったかという確認がしたくなるのです。
彼はそんなとき、少し待ってから「行くよ」と促すだけですが、その場にほかの人が通りかかると「変だと思われるよ」と気にするんですよね。
私は内心、私の辛さと知らない人とどっちが大事なの!?と思うのですが。「辛さ」ではなく「強迫観念」に置きかえると、はい、そんなもの大事にしなくていいですと同意するしかありません。
第5章 家族との取り決めの必要性
患者と家族の間で、OCDを治すために巻き込まれない、儀式に手を貸さない取り決めが必要だと書かれています。
この展開にはがっかりました。
患者と家族の間で取り決めをするのは、まず患者が強迫性障害を治す・曝露反応妨害法をやることに同意しなければなりません。
そこをどうしたらいいのかが、すっぽりと抜けているのです。
本で例として出てくるのは強迫性障害の夫と、巻き込まれている妻です。夫はすでに治療を受けており、治すために曝露反応妨害法を選んでいます。
この本の著者は治療者なのですから、治療意欲のある人が例に出てくるのは当たり前ですよね。
でも、多くの家族はその前段階の、どうしたら患者本人が治療に前向きになってくれるか?という部分で悩むのではないかと思います。
治療意欲の出しかたは家族だけの望みではなく、患者である私も曝露反応妨害法をやると決意するまで時間がかかったからこそ、知りたい点です。
ワークブックとしての要素
題名にワークブック=練習帳とあるように、ところどころに書き込みスペースがあります。ほとんどが家族に対する問いかけです。
『家族と取り組む強迫性障害克服ワークブック』なので、患者本人が主体なのかと思っていました。が、どうやら「家族が取り組む」ための本ですね。
家族に協力を頼めない私でもワークブックとして活用できるかもしれないと手に取りましたが、思い違いだったようです。
ただ、こうした家族の気持ちを問いかけて整理する本は初めて見ましたし、質問の内容も家族の気持ちをすくい上げるような的確なものだと感じました。強迫性障害がどのように家族にダメージを与えているのかが、わかりやすく整理できそうです。
『家族と取り組む強迫性障害克服ワークブック』の感想
わりと読みにくいのが残念です。
強迫性障害の本は『不安のメカニズム』『不安でたまらない人たちへ』など翻訳書も多いですが、読み始めると気にならずに楽しく読めました。
でも、『家族と取り組む強迫性障害克服ワークブック』は翻訳書だという感覚がぬぐえず…。一般向けのはずなのに堅さがあり、読むのに苦心しました。句読点(、)がカンマ(,)なのもなじめませんでした。
とはいえ、家族のためのワークブックというコンセプトはとても良いと思います。内容はいいんですよね~。
強迫性障害の子を持つ親御さんや、曝露反応妨害法をやる気がある患者さんのご家族には治療のサポートになるのではないでしょうか。