第4回新コミックエッセイプチ大賞を受賞したもつおさんの『わたし宗教』が、『高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで』という本になりました。
強迫性障害、摂食障害、精神科への入院を描いたコミックエッセイです。
タイトルが変わっただけでなく、大幅に加筆し、すべて書きなおしされています。
神様の命令をきくというちょっとめずらしい(?)強迫性障害ですが、それだけに本質が見えやすかったです。
強迫性障害と摂食障害の体験記
強迫性障害、摂食障害、強制入院、退院後の揺り戻し…高校生のわたしを苦しめたのは、自分のなかの「神様」でした。
物を触らずにはいられない、自信の体型が気になって食事ができない、同級生の視線が気になって学校へ行けない、家族や医師にさえ「神様」の秘密を打ち明けられない……ある平凡なひとりの女子高生が経験した、凄絶な日々。
精神科病院に入院し、一時は「もう無理、死んでしまいたい」とさえ思いながらも、自分を見つめて認めること、本当のやりたいことを見つけることで回復に至るまでの道のりを描く、絶望と希望のコミックエッセイ。
第4回新コミックエッセイプチ大賞受賞作品『わたし宗教』を約3年間かけて完全改稿のうえ、大幅な加筆を加えてオールカラーで書籍化。
高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで (メディアファクトリーのコミックエッセイ) | もつお |本 | 通販 | Amazon
主人公は強迫性障害と摂食障害を併発していて、どちらかというと摂食障害に目がいきがちです。
家族の理解もなく、精神科や強迫性障害の専門家の対応もそっけない。本人も自分の病気についてよくわかっていないように見えます。
高校生で家族の理解もなく、病院も頼りにならないというのは辛いですね。入院できたのはよかったです。
でもこれ、強迫性障害だけだったら病院にも連れて行ってもらえなかったのかも?
摂食障害は言葉にできない最大のSOSだったのかもしれません。
主人公の強迫性障害は縁起恐怖?
主人公の強迫性障害は、頭の中で聞こえる神様の命令に従うこと。
統合失調症の妄想のようですが、そこはちゃんと自分の空想だとわかっているみたいです。強迫性障害では縁起恐怖になるのかな。
「神様の命令に従う」のは、強迫性障害の本質をあらわしていますね。
頭の中に浮かんだ思考により行動をしてしまうという強迫性障害の流れと無意味さがとてもわかりやすいです。
不潔恐怖や確認強迫は強迫観念にも強迫行為にも、もっともらしい理由付けができてしまいます。汚い、安心、念のためなどなど。
私はそのために、強迫観念が間違っている・強迫行為が無駄だという事実をなかなか受け入れられませんでした。
でも頭の中の神様だと、なにそれ?従う必要ないじゃないと思います。
もちろん、作者が苦しんでいるのは伝わるし読んでいて胸が痛いです。が、無意味さはすごくわかってしまうのです。
まあ、同じ強迫性障害であっても、人の強迫性障害は不合理だと理解できるものです。
「神様の命令に従う」のと「強迫観念に従う」のは同じこと。強迫観念は無意味なんだな、強迫行為は必要がないんだなとあらためて思いました。
作中に「私は神様の命令を聞いているだけで本当はどこもおかしくなんかない」という言葉が出てきます。
なぜ具合が悪くなるほど神様の命令を聞いているのか、神様の命令を聞くのはおかしいと思わないのかと、過去の自分と重なって痛々しかったです。
無視してもいいように見える強迫観念だからこそ、病気だと伝わりやすいのではないでしょうか。
病院と家族の無理解がつらい
この作品で驚いたのは、医師がまったく治療できていないのと、父親がお医者さんなのに理解がないところです。
医師は大学病院にいる強迫性障害の専門家だそうで…。なのにこのレベルかとがっかりしました。
父親も精神科医ではないにしろ、お医者さんなら病気の知識を頭に入れられる能力はあるはずですよね。なのにこの…(以下同)。
逆に、強迫性障害の患者がいるご家族は、この作品で患者の考えや行動がわかるかもしれません。
強迫性障害はなんだかんだ行動に理由をつけていても、ようするに頭の中の命令に逆らえない状態なのです。
強迫症状が出ていないときは普通だったり話が通じるので、説得すれば治るように見えるかもしれません。
が、本人も自分をコントロールできない状態であり、だからこそ病気と診断されるのだとわかって欲しいです。
『高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで』試し読み
ダ・ヴィンチニュースやもつおさんのTwitterで試し読みができます。
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元になった『わたし宗教』であらすじと結末がざっくりわかります。
家族からの視点を描いた本も出ました。